Gxyh5Ju[1]

昴「栄冠ナイン?」 杏奈「うん」
http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/livejupiter/1462335400


1:名無しさん@おんJ 2016/05/04(水)13:16:40 igC
アイマス(ミリオンライブ)の永吉昴と望月杏奈が栄冠ナインをプレイするスレ。

SS速報とここのどっちに投下しようか迷ったけど、スレの書き込み制限が緩いのと野球描写多めなのでこっちでやることにしました。



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2:{前説} 2016/05/04(水)13:18:15 igC
昴「お邪魔しまーっす! 杏奈、来たぞー!」
 
杏奈「どうぞどうぞ。……昴さん、こっち座って」

昴「や~、杏奈の部屋に来るのも久しぶりだな~」

杏奈「永吉のマイライフ以来だね……。ちょっと、懐かしい」

昴「マイライフか、そんなのもあったな……。……なんか、13年目くらいからの記憶がない気がするけど」

杏奈「……なに言ってるの? きちんと20年目、終わりまでプレイした……でしょ?」

昴「あれ、そうだっけ? ところで、今度はどのモードでプレイすんだ?」

杏奈「うん……。……これ、一緒にやろ?」

昴「! ……このモードは……」

3:{前説} 2016/05/04(水)13:19:07 igC
昴「栄冠ナイン……!」

杏奈「……うん」

4:{前説} 2016/05/04(水)13:22:19 igC
杏奈「とりあえず、これで甲子園優勝とかどうかな……って」

昴「それはいいけどさ。なんで最新作の『2016』じゃなくて『2014』でやるんだ?」

杏奈「セーブデータ、一つしか作れないから。2016と2014は、バランスも大して変わらない(2016の方が『捕球』パラメータが低いときにエラーしやすい)し……」

昴「なるほど。杏奈はもう2016の方でモード始めちゃったのか」

杏奈「……うん。一からやり直そうと思ってるんだけど、この間作ったばかりのデータをまた消すのも、もったいないから」

昴「わかった。どのくらいまで遊ぶ?」

杏奈「そうだね、最新作の方で昴さんと遊びたい別モードもあるし……」

杏奈「うち(765プロ)の所属人数と同じ……『新入部員の合計が50人を超えたらその世代で終了』っていうのはどうかな?」

昴「いいんじゃね? 学校の評判によるけど『一年で6~8人くらい新入生が入部してくる』し、7,8年で終わりってことか」

杏奈「……あ。言い忘れてたけど『転生プロやOBの使用は禁止』で。基本的にベンチには入れないし、CPUが勝手に使ったとき以外は試合に出しちゃダメ……だよ」

昴「えぇ?」

杏奈「強い選手が多いから、有りにすると楽に甲子園行けちゃうかもしれないし。新入生入部縛りだけど、転生プロとかの分は人数に数えないように、しよ」

昴「じゃあ、10年足らずで甲子園優勝を目指すことになるのか。……これは、思ったより厳しい戦いになりそうだぜ」

6:{前説} 2016/05/04(水)13:27:16 igC
杏奈「まずは、チームのエディットだね」

昴「監督の名前を決めるのが先か。パワターで顔を決めることもできるんだな」

杏奈「ここは、杏奈が進めておくね」

昴「おう。……って」



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昴「オレじゃねーか!」

7:{前説} 2016/05/04(水)13:31:18 igC
杏奈「違う……よ? 昴さんとは別人の、永吉昂(ながよし こう)さんだよ?」

昴「……じゃあ、学校名は望月高校な?」

杏奈「え……」

昴「もう決まりだから。ユニフォームは……765プロが何回か野球の仕事してるし、そのとき着てたやつのどれかを参考にするかな」


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杏奈「昴さん、望月高校って、杏奈の名字と同じ……」

昴「色々あるけど、こっちのピンクのやつでいいや。うし、ゲームスタート!」

杏奈「……始まっちゃった」


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8:{本編} 2016/05/04(水)13:35:30 igC
四月。弱小の野球部を甲子園へ導くべく、永吉監督が望月高校の野球部に就任した。

新入生は六人。転生プロである久古は縛りにより使えないため、実質五人しかいないと言ってよかった。

ノビCという強力な特殊能力を持つエース候補中村、左投手に強い山崎など、基礎能力には乏しいが有望な人材が集っていた。

また、上級生にはオールマイティな能力の堀口や多彩な特殊能力を持つ岩井などがおり、面白い素質を備えた球児たちが野球部に揃っていた。

昴「これさ、初めから二回戦突破くらいはいけるんじゃねえの?」

杏奈「展開が向けば、なくはない……ね」

監督は、静かにほくそ笑んだ。

10:{本編} 2016/05/04(水)13:37:57 igC
監督の育成方針は一貫していた。それは「スタミナの強化」と「打力の強化」である。

杏奈「ピッチャーは、最低限試合を作れる能力がないと……。……それには、スタミナとコントロールの強化が必須……だから」

昴「守備は夏までに間に合わせるのは無理だし、運次第で勝てるようにパワーやミートを上げてかないとなー」

杏奈「守備力も、大事だけどね。キャッチャーは、肩をある程度強くしなきゃダメ」

昴「センターラインの走力も強化しておこうぜ。守備範囲を広くする必要があるし、足が速けりゃ攻撃にも役立つし」

立ち上がったばかりの望月高校に、課題が山積しているのは確かだった。

しかし、それだけ選手たちに伸びしろがあるということも、また確かなのだ。

なかなか成長しない教え子たちにやきもきしつつ、永吉監督は彼らを鍛えるのであった。

11:{本編} 2016/05/04(水)13:41:32 igC
迎えた、実戦の場。永吉監督が就任してから初の練習試合。

昴「先発は中村でいいよな?」

杏奈「……うん。能力なら上級生の福島や西野の方が上だけど、今のうちに少しでも信頼度を稼ぎたい、から」

昴「オーダーはちゃんと組んだし……よし! いけ、望月ナイン!」

エース候補である中村を軸に、ミート力の高い選手を上から並べた望月高校のスタメン。

下位打線には一年生の三人が置かれ、未来を見据えたオーダーで実戦に臨む永吉監督であった。



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12:{本編} 2016/05/04(水)13:44:09 igC
結果は、大敗。

そこらの有象無象と言っても変わりのない弱小のチームに対し、望月高校の投手陣は二本のグランドスラムを浴びて派手に散っていったのであった。

昴「望月に打たれた満塁弾が痛かったなぁ。最終回で反撃できただけになー……」

杏奈「……」

昴「望月、成績は普通なのにいやな打者だったなぁ。別の回でも、満塁からヒット打たれたし……」

杏奈「……」

昴「望月がな~。望月がな~」

杏奈「…………ゴメンナサイ」

厳しい旅路を予感させる一戦だった。

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13:{本編} 2016/05/04(水)13:46:11 igC
そのまま夏の本戦へなだれこんだものの、一回戦からAランクの強豪にあたり望月高校は無事コールド負けを喫する。

しかし、強豪校から奪った1点、また7本という少なくない安打数は、望月ナインの爆発力を暗示しているようであった。

昴「甲子園行きの可能性が0じゃないって改めてわかったのが収穫……だな」

杏奈「もっともっと、レベルアップさせないと……」

昴「そうそう。1点取っただけで満足なんてしてられないぜ!」

こうして、望月高校最初の夏は終わった。

しかし、永吉監督の瞳に宿る闘志は、敗戦を味わう前以上に燃え上がるのだった。

15:{本編} 2016/05/04(水)13:48:41 igC
キャプテンには俊足の岩井を任命し、打撃力重視の方針を固めた望月高校は次世代への舵を切った。

杏奈「オーダーは、あまり変える必要……ないかな」

昴「言っちゃ悪いけど、五十歩百歩の能力だしなぁ。信頼度が高めな、森下、岩井、平間らへんを上位に置くか」

杏奈「パワー、ミートを両方E以上にするのが第一歩……だね」

昴「おう! 秋の都大会は打撃力で勝つぜ!」

こうした方針のもとに、永吉監督は球児たちを鍛えていく。

大会後の合宿では西野、中村が緩急〇の特殊能力を取得するなど、練習を積んだ選手たちは着実に能力を向上していった。

18:{本編} 2016/05/04(水)13:51:24 igC
迎えた、秋季大会。練習試合も加えて4試合目の炎上、四連敗。

先発の中村が踏ん張り切れず、打線の援護も追いつかない、完全な力負けだった。

昴「……はぁ」

杏奈「…………」

さしもの監督も、この結果には気分が沈む。

20:{本編} 2016/05/04(水)13:55:30 igC
杏奈「……守備、鍛えた方がいいんじゃないかな」

昴「そこは投手力を上げればなんとかなるだろ。もうあと2,3点は取れる打線に仕上げないと」

杏奈「でも、練習試合で3エラーして……ううん。アウトになるのが普通の打球に、追いつけもしない。エラーにならないエラーがたくさんあるから……」

昴「ピッチャーがちゃんと投げられるようになれば大丈夫だって。この試合だって、序盤は零封したままうちがリードしてただろ?」

杏奈「夏で当たった強豪を除けば、うちは毎試合4,5点は取れてるん、だよ? 水物の打線を強化するより、締めるところを……きちんと、締めなくっちゃ!」

昴「もうチームの方針は打撃力重視って決まってるんだし、次の世代まで待てって!」

杏奈「……大声出さないで。ここ、杏奈の家だよ……」

昴「そっちが先に声を荒げたんじゃないのかよ!」

21:{本編} 2016/05/04(水)13:57:20 igC
永吉監督は迷っていた。

先発の中村が、試合を作れない。中継ぎである西野の防御率も悪い。三人目の久古は転生プロであるため使えず、投手の枚数が限られていることも効いていた。

投手をカバーするための野手陣も、非常に未熟なひな鳥ばかり。望月高校に大きな課題が立ちはだかった。

昴「とりあえず、守備力と捕球はE近くまで上げよう。でも、それ以外はパワー、ミート優先で行かなきゃダメだとオレは思ってる」

杏奈「……いいよもう。春までは、それで」

昴「……機嫌直せよ。キレたオレが悪かったって……」

杏奈「杏奈、怒ってないから。気、つかわないでいいよ」

昴「……ちぇっ」

チームの初勝利。それこそが、閉塞感のある現状を打破するために、何より必要なものだと永吉監督は実感していた。

22:{本編} 2016/05/04(水)13:58:44 igC
秋は過ぎ去り、冬が来た。そして到来する、二度目の春。

桜の舞う季節、入学式の前に永吉監督は一つの練習試合をとりつけた。相手は、弱小の荒川農業。

昴「とにかく試合を入れないと、信頼度稼げないしな」

杏奈「うん」

あくまで、選手の経験値を稼ぐための場。半ば自棄気味に考えていた監督だったが……。

23:{本編} 2016/05/04(水)13:59:28 igC
序盤、先発の中村は快調なピッチングを見せ荒川農業の打線を見事に封じ込める。

3回には4番を任せた平間にタイムリーが出て先制。これに気をよくしたか、中村は更に0行進を続ける。

7回。ついに捕まった中村が一死一・三塁のピンチを最少失点で切り抜けると、その裏だった。

24:{本編} 2016/05/04(水)14:00:24 igC
(カキンッ)

昴「いけっ」

(キンッ)

杏奈「いけっ……」

(キィンッ)

昴「いけえええええええええええええええええええ!」

(カキィンッ!)

25:{本編} 2016/05/04(水)14:01:46 igC
11安打8得点。7回裏、二死満塁からのサヨナラ満塁本塁打によるコールド勝ち。

これまでのうっぷんを晴らす、目の覚めるような大勝だった。

杏奈「杏奈たち、間違ってなかったんだね……」

昴「うん。選手たちみんな、あんなに弱かったのに指示通りに練習して、勝ってくれたんだ」

杏奈「……今回の相手は弱小校だし、この勝ちも、運がいいだけだったのかも、だけど」

昴「オレたちなら……望月のみんななら、きっと本番でもやってくれるよな!」

杏奈「新入生も入ってくるし、まだまだこれからだね……! 頑張ろう、昴さん」

昴「おう!」

永吉監督の視界に、一筋の光明が差しこんできた一日だった。

26:{本編} 2016/05/04(水)14:03:16 igC
そして4月。新入生が入部する時期となった。

ノビB持ちの新たなエース候補、今井。球持ちがよく130km/h台後半の直球を投げる平山。チャンスに強い木戸、伊藤の野手陣など、次の試合が楽しみになる顔ぶれだった。

杏奈「この世代は”やる”よ……」

昴「うん。有望な選手ばかりだぜ」

チームの練習方針をバランス重視に切り替え、守備を磨きつつ打力にもブラッシュアップを行っていく。投手陣の変化球レベルも上がり、望月高校のチーム力は1年前のそれとは明らかに様変わりしていた。

27:{本編} 2016/05/04(水)14:05:22 igC
2度あった練習試合を1勝1敗で終え、迎えた夏の甲子園予選。

昴「相手の前評判……Cランクだっけ?」

杏奈「うちの戦力はDランク……。普通なら、格上の相手、だけど」

昴「練習試合とはいえ、うちのチームは2試合もコールド勝ちをおさめてきてるんだ。流れさえ向けば下剋上のチャンスは十分だな」

杏奈「中村も、やっと安定してきたしね」

昴「新入生も木戸がスタメンクラスだし、平山と今井の二人もリリーフに使える。去年の、3年生しか頼りにならなかった頃とは全然違うな」

杏奈「もしかしたら、今年も初戦で終わりかも……。……でも、杏奈たちの育ててきた選手なら……!」

望月高校に、2度目の夏がやってきた。

28:{本編} 2016/05/04(水)14:07:39 igC
対戦相手の世田谷中央は明らかに格上だった。

粗こそあるが、一芸に秀でた能力を持つ野手陣がスタメンに並び、先発した軟投派投手が好投を続ける。望月高校は初回にリードを奪ったものの、すぐに追いつかれてしまう展開となった。

エース中村が粘りのピッチングを見せ、1年生の木戸が勝ち越しのタイムリーを放つなど、望月高校のナインも躍動する。

しかし、その陰で監督の表情には焦りが浮かんでいた。2-1で勝ってはいるものの、1点のリードではまったく安心できない相手なのだ。

潮目が変わったのは、6回だった。

29:{本編} 2016/05/04(水)14:08:38 igC
平間のヒット、寺川の四球、森下のヒットで満塁。アウトカウントはツーアウト。打席には、ただ一人1年生でスタメン入りを果たした、木戸。

昴「流し打ち。ミートも打ち方もおまかせで」

杏奈「うん。ここは、木戸を信じるしかない……ね」

昴「……」

(キンッ)

杏奈「……!」

30:{本編} 2016/05/04(水)14:11:56 igC
真ん中に入ったフォークをすくった打球は、レフトの前にポトリと落ちた。

望月高校、1点だったリードを2点に広げる。

昴「っし!」

杏奈「流石……!」

チャンスに強い特性とバランスのよい基礎能力を見込まれ、山崎からスタメンを奪った1年生、木戸。

才能の片鱗を示した瞬間だった。

31:{本編} 2016/05/04(水)14:16:29 igC
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終わってみれば、14-6という圧勝劇。

打率0割台の3年生、白石が満塁弾を含む2HRを放つなどして、打線が爆発した結果だ。

杏奈「評判も『そこそこ』になったよ……! これで、練習の選択肢が増えるし新入部員も多くなる……ね!」

昴「いや、まだだぜ。こんなの負けたらすぐ弱小に戻っちゃうし、この試合も課題が見つかったしな」

杏奈「勝ってかぶとの緒を締めよ、だね」

昴「コールドだと思って1年生の控え使ったら、点差縮められたりしたからなぁ。本当、野球ってのは油断すると怖いぜ」

格上相手の大勝という結果にも、浮かれるわけにはいかない。夏はまだ始まったばかりだ。

32:{本編} 2016/05/04(水)14:18:02 igC
2回戦。3本のツーランで大量リードを奪った望月高校は、8回1/3、130球を投げ切った先発の中村を最終回の土壇場で降ろす決断をする。

昴「9-5でワンアウト一塁……。相手は4番か」

杏奈「今井を使いたい、けどね。左打者に弱いから、ここではまだ、かな」

昴「じゃ、平山投げさせるか。前の試合で打たれたリベンジ期待するぜ~」

この後平山、今井が続けて打ち込まれ、望月高校は1点差に詰め寄られる。

なおもツーアウト一、三塁。マウンドには、この夏初登板の3年生、西野。

33:{本編} 2016/05/04(水)14:19:12 igC
昴「西野~~~西野~~~~~」

杏奈「まだ1点ある……同点なら平気……平気…………」

昴「3年生の意地見せろ西野……。こんなとこで負けたくねえよ……」

杏奈「西野西野西野西野」

(カキンッ)

昴「西野ぉ~~~~~~~~」

杏奈「……っ」

34:{本編} 2016/05/04(水)14:21:05 igC
ボテボテのピッチャーゴロ。マウンドを駆け降りた西野が落ち着いて処理し、一塁に転送して試合終了。

薄氷を踏むような勝利だった。

杏奈「これからは、コールドつけられる点差じゃない限り、1年生のリリーフはやめよう……ね」

昴「流石にやばかった」

杏奈「勝ったからよかったけど……」

昴「野球って本当に怖えよなぁ」

改めて、気を引き締める永吉監督であった。

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35:{本編} 2016/05/04(水)14:24:57 igC
三回戦。対戦相手は、荒川農業。

練習試合でコールドした相手だったが、転生OBである奈良原や王を擁する打線に中村は苦しめられ、終始劣勢となる望月高校。

9回裏。6-3。ツーアウト満塁。バッターは、ここまで通算3HRを放ってきた、白石。

昴「流し打ちだな」

杏奈「うん。流し打ちの特殊能力あるし」

昴「三振でも、オレは文句言わないよ」

杏奈「思いっきり振ってくれれば、いいよね」

その前の打席では、3年生としてこの夏初出場となった、代打の服部がヒットを放っていた。

同い年の仲間が演出してくれた、最終盤の好機。逃すわけにはいかない。

36:{本編} 2016/05/04(水)14:26:52 igC
(キィンッ)

昴「抜けろ! 抜けろ!」

杏奈「……やった! 1点返したぁ!」

指示通りの流し打ち。白球は鮮やかな軌跡を残し、一二塁間を駆けて行った。

37:{本編} 2016/05/04(水)14:30:21 igC
試合はその後、後続の仁後が倒れてゲームセット。

望月高校二度目の夏は終わりを告げ、中村をキャプテンに据えた新たな世代の物語が幕を開けた。

杏奈「ここからは、杏奈たちが、ゲームを始めてから入学した世代になる……ね」

昴「チーム力も、去年の今頃に比べたらかなり充実してるし。本腰入れて甲子園を獲りにいくぜ!」

と永吉監督は意気込むものの、セカンドをまともに守れる者すらいないという現状。

春に入部していた新入生組が比較的守備力に恵まれているということもあり、バランスを重視しつつ、打撃を中心にチームを鍛えていくことに決めた。

38:{本編} 2016/05/04(水)14:33:04 igC
秋初戦。相手はEランクの恵比寿工業。

先発中村が7回無失点の好投。山崎と寺川の二人がアベックホームランを放ち、望月高校の勝利に花を添えた。

木戸の猛打賞や、2回を二人で投げ切った平山、今井の好投など新入生組の結果も上々だった。

昴「まあまあだな」

杏奈「平山には、もう少し安定感が欲しい……な」

昴「イベントでノビCとジャイロボール取得したから、球速を上げればエースになれるよ、あいつは」

杏奈「実戦の中で鍛えていかなきゃ、だね」

昴「勝つことが最優先だけどなー」

秋の都大会、チーム初勝利。その事実に目もくれず、あくまで先を見据える永吉監督であった。



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39:{本編} 2016/05/04(水)14:39:16 igC
翌二回戦。初回中村が先制を許す展開となるも、即座に藤井のホームランで取り返す望月高校。

藤井はその後も二打席目、四打席目にホームランを放ちこの試合だけで3HR8打点と大暴れ。最後は雨宮がコールドを決定づけるサヨナラ弾を放ち、望月高校は永吉監督就任二年目にして秋の地区大会出場を決めた。

杏奈「運がよかった、ね。弱小校との二連戦だったし……」

昴「でも、強いチームの野球だったぜ。この調子を保てれば、地区大会でもいい勝負できると思うよ」

杏奈「選抜への切符……欲しいね……」

昴「おお! 油断しないでいこうな!」

一年前、悲嘆にくれていた永吉監督。その表情は、今は影も形も見えなかった。

積み重ねてきた練習と、勝利によって得た経験が、弱小チームを別物に変貌させていたのであった。


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40:{本編} 2016/05/04(水)14:43:04 igC
地区大会、一回戦の相手は前評判Bランクの八王子商業だった。

昴「久しぶりの、強豪校との対戦だな」

杏奈「去年の夏は、Aランク校と戦ってコールド負け……」

昴「正直、勝てないかもしれねえ。でも、諦めるのだけはダメだな」

杏奈「……何が起こるかわからない。それが……」

それが、野球というスポーツだから。

望月高校は、諦めるわけにはいかない。

41:{本編} 2016/05/04(水)14:45:23 igC
立ち上がり、エースの中村は2点のリードを許す。

その後も小刻みに点を取られ、6回を終わって5-1のビハインド。誰が見ても、望月高校は劣勢だった。

昴「諦めちゃダメだ」

杏奈「……最後には勝てなくても、最後まで勝つと思って戦わないと、意味がない」

昴「ただやるだけじゃ、経験にもならないもんな。一本のヒット、一つの四球でもいいから、何か結果を出さなくっちゃ」

杏奈「杏奈、絶対に、諦めない」

昴「うん。オレは、オレたちの育ててきた選手たちを信じるよ。最後まで」

強豪相手に、ここまで終始劣勢を強いられる展開。

しかし―。

42:{本編} 2016/05/04(水)14:49:02 igC
(カキィンッ!!)


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昴「……っ」

杏奈「すご……」

43:{本編} 2016/05/04(水)14:51:42 igC
昴「野球は筋書きのないドラマだっていう格言、杏奈は知ってる?」

杏奈「聞いたことは、あるよ」

昴「すげえな、望月高校の選手は」

杏奈「うん。これが、野球っていうスポーツ……なんだね」

昴「でも、まだ同点に追いついただけだ。勝ったわけでも逆転したわけでもねえ」

杏奈「中村は降りて、平山が好リリーフしてくれてる、ね。このまま行けるとこまで行かせて、今井と二人で9回まで投げさせたい……な」

昴「平山のやつ、今になってやっといいピッチングしやがって……」

杏奈「……この試合。最後の、最後まで、」

昴「絶対に、諦めないぞ!」

44:{本編} 2016/05/04(水)14:54:19 igC
9回裏。ツーアウト、ランナーなし。1点のリードを許し、バッターは山崎。

(ガキンッ)

打球がライトのグラブに収まった瞬間、望月高校の、昨年より少しだけ長い秋が終わった。

これまで軽視していた走力を鍛えつつ、昨年よりも少しだけ短い冬が終わりを告げる。

中村世代の春。そして、甲子園の懸かる夏が、すぐそこに迫っていた。


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45:{本編} 2016/05/04(水)14:58:52 igC
春。永吉が監督就任後の、三度目の出会いの季節。

基礎能力が高いのは一塁手の田所だけだったが、威圧感持ちの諏訪やチャンス・対左投手に強い麻倉のように今年も有望な新入生が入部した。

杏奈「評判が『そこそこ』になって、人数自体も増えたのがいい……ね」

昴「これで心置きなく久古をベンチから外せるな。ノビCを持ってる阿部はエース候補だな」

杏奈「ノビやキレのいい投手は、それだけで強いからね」

昴「そろそろ結果が欲しい時期だなー。まだ夏も秋も二回ずつ勝っただけだし、ベスト8、いや、優勝して甲子園まで行きたいな!」

杏奈「杏奈たちの采配次第で……強豪校相手でも」

昴「オレたち次第、か」

そう。選手を鍛えることだけが監督の仕事ではないのだ。

新たな可能性を秘めた新入生が加わったことで、改めて責務の重さを感じる永吉監督であった。

46:{本編} 2016/05/04(水)15:02:45 igC
夏の予選一回戦。相手は弱小の恵比寿商業。

しかし、転生OBの王を擁するこのチームに望月高校の面々はまさかの苦戦を強いられる。

スタミナの尽きかけた中村を、浅倉が励まし喝を入れて無失点。7回2/3を1失点という粘投に応えるかのように雨宮、寺川がホームラン。

8回途中から登板した平山が143km/hの速球で最後を締め、6-2の完勝で夏の初戦を飾った。

昴「もうちょっと楽に勝てると思ったんだけどなぁ」

杏奈「なんだかんだ、うちの戦力はDランクだから……ね」

昴「うーん。そう簡単に強くなったってのが勘違いだったのか」

杏奈「まあ、勝ったんだし。次の試合も、勝ちたいな……」


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47:{本編} 2016/05/04(水)15:04:40 igC
二回戦。0-0行進が続く5回の裏に山崎のタイムリーを皮切りに打線が爆発し、快勝。

三回戦。中村が打ち込まれ、4点のビハインド。

しかし6回。無死一三塁、寺川のスリーランをきっかけに打線が目覚め逆転。

が、その裏に中村、平山が炎上し再逆転を許し、試合はシーソーゲームに突入。

スコアは17-11。互いに二桁得点を記録する凄絶な打撃戦を制したのは、望月高校だった。

48:{本編} 2016/05/04(水)15:06:23 igC
昴「勝ったのはいいけど、出た投手全員打たれたしなんとも言えない結果だな」

杏奈「打も、投も、安定感がね。ハマったときには強いんだけど……」

昴「それじゃ甲子園までの道のりは戦えないって。長丁場で安定して実力を発揮できるようにしないとさ」

杏奈「……けど、初めての三回戦突破……だよ」

昴「そこは嬉しいよなぁ。去年よりは、上に来れたってことだもんな」

杏奈「うん。投手は打たれてるけど、その分色んな選手が登板して信頼度も稼げたし……今はよし、って考えよ?」

試合の検討をしつつ、一つの目標を越えたことに喜びをかみしめる永吉監督。

大炎上後の中村にピンチEのバッドステータスが身に付いていたが、このときばかりは些細なことであった。

49:{本編} 2016/05/04(水)15:08:31 igC
迎える東東京都大会四回戦、準々決勝。相手はランクDの弱小だが、油断するわけにはいかない。

ところがこの試合。つい先日の炎上が嘘のように、中村は内野ゴロの山を築く。

敵の品川大付属を散発の6安打に抑え、公式戦初の9回完封。気が付けば、ベスト4に到達していた。

50:{本編} 2016/05/04(水)15:14:55 igC
準決勝。相手は、この夏で一皮剥けた望月高校と同じくCランクの江戸商業だった。

同格だった二校の勝敗を分けたのは、なんの差だったのか。

0-0の中盤、雨宮のセンター前タイムリーで望月高校は1点をもぎとる。

しかし相手の先発小俣は後続を切り、1-0の緊迫した展開が続く。

そこに待っていたのは、四番の特大ホームランだった。


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チーム随一のパワーを誇る寺川。夏の空に描かれた130m級のアーチは、とてつもなく重い2点をスコアボードに刻み込んだ。

51:{本編} 2016/05/04(水)15:19:04 igC
永吉監督は振り返る。

昴「中村は惜しかったな。あと一人投げ切れば、二試合連続の完投勝利だったのに」

杏奈「でも、タイムリーを打たれてスタミナ切れになってたから……しょうがないよ」

昴「後を受けた平山がよく投げたぜ。ランナーも残ってたけど、ちゃんとそこで切ってくれた」

杏奈「今までは、打ち合いの殴り合いだった。けど、接戦を二つ続けてモノにできたのは凄く大きい……ね」

昴「あと一戦で甲子園か……。正直、実感湧かないや」

杏奈「まず、勝ってからの話だよ。……そこが、本当のスタートラインになるんだから」

準々決勝、準決勝、理想と言ってもいいような勝ち上がり方。

まだ頂上に登ったわけではない。そこから見る景色を知るため、より高みへの一歩を踏み出すために。

残り一戦、望月高校は死力を振り絞らねばならなかった。

52:{本編} 2016/05/04(水)15:22:39 igC
決勝戦。Aランク、小笠原学院との試合。

1回表に一死満塁の好機を作った望月高校だったが、五番雨宮が痛恨の併殺打。その後も、小笠原の固い守備陣の前に幾度となく弾き返される望月ナインの攻撃。

名門校相手に5回無失点の力投を続ける中村に福音をもたらしたのは、6回。女房役の仁後の打席だった。

53:{本編} 2016/05/04(水)15:24:11 igC
昴「二死二三塁……。ピッチャー疲れてるし、ここでそろそろ取らないと……」

杏奈「次の投手に代わっちゃう……。雨宮の『ゆさぶる』コマンドで、調子を落としている今のうちに……」

(キインッ!)

昴「!」

杏奈「……ぬっ」

昴「抜けたああああああああああああああああああああ!!」

杏奈「……っ!」


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54:{本編} 2016/05/04(水)15:27:28 igC
先制の一打は、一二塁間を破るライト前タイムリー。

しかし、その直後に中村は一死満塁のピンチを作ってしまう。

(キィンッ)

昴「……やられた」

杏奈「これが、本当に強いチームなんだね」

連続タイムリーで2点差とされる望月高校。ランナーを出すも、小笠原学院の固い守備陣の前に併殺の山を築いてしまう。

反撃の2点目が遠い、苦しい展開にもつれ込んだ。

55:{本編} 2016/05/04(水)15:32:51 igC
それでも、中村の失点は6回のみ。名門校相手に8回3失点という堂々たる成績を残し、味方の援護を待つ。

9回。先頭の仁後がツーベース。追撃には格好の状況ができあがる。

昴「ノーアウト二塁って……打たせてくしかないだろ」

杏奈「うん。2点差だから連打しないと追いつけないし、打線も下位で代打もいないし……ね」

56:{本編} 2016/05/04(水)15:36:51 igC
仁後に続いた伊藤は、サードライナーに倒れた。

打席に入るは、エース中村。

杏奈「チャンスCで信頼度MAX、打撃能力もミートCパワーEで充分にある……」

昴「得意の流し打ちを指示して、見守ろう。オレらにできることは、もうそれくらいしかないよ」

杏奈「うん……」

(ガキンッ)

昴「!」

杏奈「!」

57:{本編} 2016/05/04(水)15:40:29 igC
昴(くそ、サードゴロか……)

杏奈(ランナー進められたし、最低限……)

その刹那だった。

『アウトォ!』

ボールを捕球した三塁手は、振り向きざまにランナーの仁後をタッチし、ツーアウト目を取る。

すぐさまファーストへ送球し、スリーアウト。試合終了。

昴「……は、」

杏奈「負……け……?」

中村世代の夏は、中村のサードゴロダブルプレーでその幕を閉じたのだった。

58:{本編} 2016/05/04(水)15:42:49 igC
永吉監督は、こう振り返る。

昴「普通に考えりゃ、まあ、当然のプレーなんだよな。あれは」

杏奈「内野手の反応が速かった、それだけのこと」

昴「オレら、弱小から中堅レベルのプレーばっか見てきたから。ほぼサードに到達してた仁後を見て、あれで『進塁打だ』って思っちゃった」

杏奈「あれが、名門校……強豪中の強豪の守備なんだよね」

昴「今まで勝ってきたのも、最高でCランクくらいだしな。この試合だって、運がいい方の部類だった……よな?」

杏奈「それでも……届かなかった」

昴「勝てなかった」

杏奈「点差以上のものを感じた、よね。勝てた試合だったかもしれないけど、完敗、だった」

昴「また一から出直しだな。中村や、寺川。山崎や雨宮、仁後の3年生たちには礼を言いたいよ」

杏奈「それに、縛りプレイで迷惑かけちゃった久古にも」

昴「三年間、ついてきてくれてありがとうってな」

杏奈「楽しい三年間だったね。……ありがとう」

59:{本編} 2016/05/04(水)15:44:18 igC
キャプテンには、チャンスに強い打撃で幾度もドラマを演出してきた木戸が選ばれた。

昴「1年生からスタメンにいたしな」

杏奈「うん。木戸なら、きっと中村や山崎たちの後を立派に継いでくれる……よ」

夏大会の中で全体的に打力がアップしたことを踏まえ、永吉監督はチームの育成方針を守備・投手力重視へ変更。

杏奈「今の投手陣は、みんないい特殊能力持ってるから。……基礎ステータスを鍛え上げて、確固たる守備力を目指したい、な」

昴「打撃は信頼度を上げればなんとかなるし、守備を安定させて格下相手に取りこぼさないようにしないとな」

今日の強豪校が、明日の中堅校へと変わる世界。それが栄冠ナイン。

夏の都大会で得た評判とそれに付随する特典を守るため、永吉監督は手堅い一手を選んだ。

60:{本編} 2016/05/04(水)15:48:54 igC
秋の都大会、一回戦7-1。二回戦10-0。

平山、今井の両投手が見事な投球を見せ、藤井や伊藤を中心に回る打線がそれに応える。

田所や桐谷などの新戦力もホームランを放つなどし、盤石の布陣で望月高校は地区大会へコマを進めた。

中村の引退後にエースに座った平山について、永吉監督はこう話した。

昴「ストレートがいいんだ、アイツ。入学してきた時から136km/hあったし、エースかクローザーで使えるって思ってた」

杏奈「特殊能力が、凄い……。元々ピンチと左打者に強かったけど、イベントでノビ・キレ・ジャイロボールに球持ち〇やリリース〇を取得したん、だよね」

昴「変化球も悪くないしな。よく曲がるカーブと、きゅっと曲がるシュートのコンビネーションはシンプルに強いと思うぜ」

杏奈「二番手の今井もノビBだし、阿部、野村の1年生コンビも……いい感じ。このまま、穴のない投手陣を作れたらいいな……」

野球は投手。これは真理である。

打線が夏から破壊力を継続させる一方で、確固たる投手力が、新たなチームに根付こうとしていた。


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61:{本編} 2016/05/04(水)15:52:27 igC
練習試合での引き分けを挟み、地区大会へ臨む望月高校。

対するはバランスよく整った布陣を擁する福生南。Bランクの強豪校だった。

昴「強豪との勝負も、避けては通れないしな」

杏奈「平山今井、この二人ならきっと……」

戦力で言えば、明らかに格上の相手だ。

それでも監督とナインの闘志が萎えることはなく、却って燃え上がっているようでもあった。

62:{本編} 2016/05/04(水)15:55:57 igC
投手戦が予想されたが、2回の裏。望月高校の攻撃。

満塁のチャンスで望月高校に夏川の2点タイムリーが飛び出し、この回3点。

直後の3,4回は平山が小刻みに打たれ、福生南も3点を奪取。打撃戦の様相を呈し始める。

が、そこからは両先発が踏ん張り3-3のゲームが続く。両者ともに、ピンチを迎える場面はあったが落ち着いた投球で切り抜けていった。

そして、8回。平山の後を受けた今井が投じた1球だった。

(キィンッ)

左中間に跳ねるクリーンヒット。望月高校、この試合で初めてのリードを許す。

その裏の攻撃に円陣を組んだ望月高校は、ワンアウトからキャプテンの木戸がヒットで出塁する。

1点差。打席には四番の藤井。

間違いなく、この試合のターニングポイントだった。

63:{本編} 2016/05/04(水)16:00:08 igC
結局、藤井は歩かされ、後続の浅倉が凡退し無得点。

8回に許した1点を返せず、望月高校は惜敗した。

昴「……これは悔しいな」

杏奈「もっと、投手力を磨かないと。守備も大事だけど、打線に穴を空けない工夫も……必要だね」

昴「つーか、学校の評判『そこそこ』に下がっちゃったよ……」

杏奈「夏……。絶対、甲子園に行こうね」

更なるレベルアップを誓い、球場を後にする永吉監督であった。

64:{本編} 2016/05/04(水)16:07:41 igC
ほどなくして、10月下旬、ドラフト会議。

望月高校からは寺川、雨宮、仁後の三人が指名を受け、プロの世界へ羽ばたくこととなった。

昴「三年やって、初めてのプロ入り選手が一気に三人……!」

杏奈「嬉しいね……」

その余韻も冷めやらぬ中、チーム強化に余念のない永吉監督により、早速練習試合が組まれる。

平山今井の二本柱が打ち崩されるも、平山のグランドスラムと伊藤のスリーランが二度の逆転劇を演出。

まだまだ未熟な新生望月高校だったが、プロへ向かう三人に勝利を捧げるのであった。



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65:{本編} 2016/05/04(水)16:12:11 igC
悔しい敗戦を経験した秋。冬の合宿で力をつけ、卒業式で三年生に別れを告げた木戸世代。

正捕手夏川がキャッチャーCの取得に成功。試合に勝つことで貯めたポイントを用いて練習機材を揃えるなどして、夏に向けて盤石の基盤づくりを行う。

そして来る、入学式。

昴「あれ、この星ってやつ、転生プロじゃねーか?」

杏奈「この中畑って……リアルで監督やってた中畑さんだよね?」

昴「外野は二人ともいい感じだな。守備走塁系の特能を持ってる大関と、打撃系の特能を持ってる渡部とでいい感じに分かれてるし」

杏奈「また、ノビC持ちの投手が来た……ね。もう一人の投手も、基礎能力はまずまずかも」

転生プロを除いた新入生たちは、突出した能力の持ち主こそいないものの、やはり興味深い逸材だった。

66:{本編} 2016/05/04(水)16:16:22 igC
育成方針を打撃重視に切り替え、永吉監督は四年目の夏に向かう。

昴「……うん。スタメンはこんなもんかな」


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杏奈「夏川→麻倉→藤井→木戸の並びは強力、だね。五番以降は少し心もとないけど、チャンスに強い選手がたくさんいるし……」

昴「秋以降を考えると、一人でいいから二年生を上位に置いておきたかったんだよな。麻倉が成長して藤井の前に置けるようになったし、これでうまく回ってくれるはず」

杏奈「投手力はそこそこになってるから、後は野手陣の手入れだけ……。強豪校相手でも、3,4点は入れられる打線を作らないと厳しいから」

昴「戦力ランクはCか。意外性と経験で稼いでるけど、基礎能力をもっと鍛えないと」

なんとしても、この世代で甲子園の土を踏む―。

監督の思いは、これまでで一番強いものであった。

67:{本編} 2016/05/04(水)16:20:11 igC
今季初の練習試合、相手は荒川大附属。

昨秋甲子園出場を決めたBランクの強豪であり、春の力試しとしてはうってつけの相手であった。

試合は、エース平山が先制を許したものの、持ち前の直球で追加点を許さず。2-0のまま5回までをしのぐ。

その裏。夏川のツーベースと、麻倉のヒットで一死一三塁。バッターは、昨秋大会で四番も務めた藤井。

68:{本編} 2016/05/04(水)16:23:51 igC
三球目だった。

(カキィンッ!!)

昴「ぁっ……」

杏奈「カットイン演出、入った……」

麻倉が作ったチャンス。活かさないわけにはいかない。

そういわんばかりの特大140m弾が、グラウンド上空へ突き抜けていった。

69:{本編} 2016/05/04(水)16:26:22 igC
試合は、終盤に平山が崩れ5-3で惜敗。

杏奈「采配が……悪かった」

昴「杏奈の言う通りだな。平山を引っ張りすぎたオレたちのミスだ」

杏奈「投手の枚数があるんだし、どんどんつぎ込まなくちゃ、無駄だよね。信頼度も稼げないし……」

昴「ただ、Bランク相手でもここまで戦えるのがわかってよかったよ」

杏奈「まぐれでも、ラッキーでもない」

昴「オレたちは、戦える」

敗北するも、望月ナインの実力に確信を抱いた永吉監督。

己が失策を自省しつつ、夏の本番を見据えるのであった。

70:{本編} 2016/05/04(水)16:28:32 igC
組み合わせ抽選の結果、望月高校は二回戦から都予選に臨むこととなった。

先陣を切った他チームの試合を観戦し、発奮する望月ナイン。

ナインを待っていたのは、始動の二回戦でサヨナラ負けという現実だった。


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71:{本編} 2016/05/04(水)16:30:39 igC
昴「……」

杏奈「……」

昴「……」

杏奈「……」

昴「……」

杏奈「……」

昴「……………………」

杏奈「……………………」

72:{本編} 2016/05/04(水)16:34:07 igC
最強世代のはずだった。

150km/h越えのエース。140km/h後半コントロールCの二番手。パワーA越えの二人を含め、チャンスC以上の勝負強さを持った打者が六人も並ぶ打線。

全てが無と化し、失意の永吉監督はグラウンドを去るのであった……。

73:{本編} 2016/05/04(水)16:41:26 igC
永吉監督は、絶望していた。

必勝を期して、三年生中心で挑んだ四度目の夏。最悪の結果となり、後進の育成もままならぬ状態だった。

中村世代で手にした勝利、喜び、感動、そして何より信頼できる教え子たち……それを今の望月高校で得ることは殆ど不可能と言ってよかった。

このモードをプレイしてから、何度となく敗れ、初勝利の味を知り、這い上がってきたのだ。

が、一敗地にまみれたことで全ては0となった。

監督は、絶望していた……。

74:{幕間} 2016/05/04(水)16:44:37 igC
昴「……ぁ~あ、ねみぃ……。昨日はだいぶ長い間プレイしてたな……」

杏奈「おはよ、昴さん」

昴「ああ、杏奈か。オレより早起きなんて珍し……ってもう昼!? オレそんなに寝てた!?」

杏奈「ん、寝てた。お昼食べてから、栄冠ナイン再開……する?」

昴「……」

杏奈「……」

昴「……いや、いいよ。最新作あるんだし、そっちで選手作ったり対戦したりしよーぜ」

昴「栄冠ナインは、もう……いい」

杏奈「…………」

75:{幕間} 2016/05/04(水)17:08:04 igC
昴「じゃ、オレ帰るよ。昨日今日は泊めてくれたりでありがとな」

杏奈「うん。明日は……仕事あるから、明後日の休みとか……どう?」

昴「どうって?」

杏奈「昴さんも、明後日はオフでしょ? また、一緒に」

昴「そうだなぁ。ゲームばっかやってると体なまるし、気が向いたらまた連絡するよ」

杏奈「……そう。じゃ、またね昴さん」

昴「うん。またなー」



杏奈「……杏奈も、ゲームじゃなくて宿題でもしよっかな……」

76:{幕間} 2016/05/04(水)17:11:22 igC
昴「ただいまー。今日のプロ野球は……っと」

昴「……ああ、セリーグは広島が調子いいんだっけ。中日が三タテされてたからなぁ」

昴「去年は八木や藤井が頑張ってたのにな。二人とも今年は出番少ないけど、藤井は得点圏がよかったし今も代打で使われてるな」

昴「……そういや、オレたちが育てた藤井もチャンスBだったっけ。長打力もあったし……」

昴「……はぁ」




杏奈「古典の課題、めんどくさい……な。……えーと、今でいう1月が睦月、2月が如月で……」

杏奈「……8月が、望月。杏奈の名字と、同じ」

杏奈「……望月高校、あのとき、どういう風に指示してれば勝てたんだろう……?」

77:{幕間} 2016/05/04(水)17:13:15 igC
昴「パの方はロッテが2位につけてるいいけど、中村がサードで固定されてんのか。早大の出身だっけ? ……えっと」

昴「うん、早稲田だな。『四年時には主将を任され……』か」

昴「……甲子園行けそうだったあの世代も、中村がキャプテンだったなぁ……」



杏奈「藤原道長……? 日本史で、見たことある、かも」

杏奈「『この世をば 我が世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば』」

杏奈「……また、望月だ……」



昴「……」



杏奈「……」

78:{本編} 2016/05/04(水)17:18:52 igC
翌日の夜。再び、戦いの場へ赴く監督の姿があった。

昴「……今日は仕事あったけど、明日は、オレたちまた休みだから……」

杏奈「待ってたよ。……また、甲子園目指して頑張ろう……ね」

昴「……おう」

苦い記憶があった。ゲーム内の出来事としても、一日二日では忘れることもできなかった。

教え子たちの無念を晴らすため。

脳裏にこびりついた悔恨の思いを拭い去るため。

永吉監督が、望月高校のグラウンドに帰ってきた瞬間だった。

79:{本編} 2016/05/04(水)17:23:32 igC
公式戦を勝ち抜いていくことで、選手の能力は大きく伸びていく。

まさかの初戦敗退ということでその恩恵を受けられなかった木戸世代の下級生たちだったが、投手陣の柱となっている阿部、野村の二人をはじめ、意外にもソツのないメンバーが揃っていた。

しかし、打者で長打力に秀でるのはパワーCでキャプテンの田所のみ。

ミートC以上の巧打者も一番に据えた麻倉のみという迫力不足な打線だったが、持ち前の特殊能力と、かねてより鍛えてきた守備力は『そこそこ』の高校としては非凡なものだった。

昴「楽に勝てていける世代とは思わないな。でも、弱い世代とも思わない」

杏奈「機材やグラウンドレベルは、まだ維持されてるから……ね。どこまで鍛えられるか……」

秋初戦。強豪の銀座学院にコールド負け。学校の評判も『弱小校』に逆戻り。

昴「元々0からの再出発だったしな。アンラッキーだけど、このくらいは全然大丈夫だろ」

杏奈「まあ、ね。ここからどう立て直していくかだから」

出鼻のつまずきにも、永吉監督の闘志は折れなかった。

80:{本編} 2016/05/04(水)17:25:20 igC
ドラフトでは、藤井と木戸の二人が指名を受ける。

昴「平山か今井のどっちかは、プロ行って欲しかったけどな……」

杏奈「しょうがない……ね」

都大会の後はバランス重視の方針をとってチームを鍛え、二度の練習試合では『そこそこ』相手に危なげない試合運びで連勝。

学校の評判も『そこそこ』に戻し、個の力では木戸世代に敵わずとも総合力では劣らないチームが完成しつつあった。

81:{本編} 2016/05/04(水)17:29:57 igC
四月。永吉監督が就任して五回目の春。

制球力に定評のある駒形や攻守に長じる捕手の若林など、今年もなかなかの選手たちが入部した。

昴「そういや、今までの新入生って全部で何人くらいになった?」

杏奈「転生プロをなしにすると、30人くらい……。あと4,5世代で一区切り、かな」

昴「そうか……。いい加減、甲子園くらいは行かないと間に合わないな」

杏奈「うん。……甲子園『くらい』、たどり着かないと……ね」

長打力のある打者が少ない一方でミートが高い巧打者が多い状況を鑑み、永吉監督は初めて機動力重視を育成方針に掲げる。

連打と走攻で塁上を賑わせ、自慢の投手陣を広い守備範囲でサポートする。そういった勝ち方をイメージしての目論見だった。


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82:{本編} 2016/05/04(水)17:32:32 igC
夏。二回戦。

秋も敗れた強豪銀座学院に二本のスリーランを浴び、コールド負け。

昴「田所や野村たちには悪いことしたな」

杏奈「今まで運もいい場面が何度もあった。……本当の力が試される時期が来てる」

昴「ここ二世代、投手を鍛えてもうまくいかなかったな。守備も大事だけど、やっぱり打力を鍛えた方がこのゲームでは強いんじゃねえかって思うんだけど」

杏奈「ん、賛成」

ショートを守る高橋を主将に任命し、打撃重視の方針を掲げ秋を目指す永吉監督であった。

83:{本編} 2016/05/04(水)17:34:56 igC
昴「やばい……」

杏奈「まずい……」

昴「やばいやばいやばい」

杏奈「まずいまずいまずい」

秋大会。

初戦は制したものの、エース釘宮が炎上し二回戦で負け。

昴「なんでだ? 平山や野村、釘宮もマイナス特殊能力ないのになんで打たれるんだろう?」

杏奈「変化球が足りないのかな……。でも、変化球は伸ばすのに時間がかかるし」

昴「野手はまあまあいい感じなのに」

杏奈「投手陣の炎上が……終わらない」

昴「信頼度が足りないんだよなぁ。多分だけど」

杏奈「でも、勝てないから試合数も少ない。信頼度が、稼げない……」

望月高校に、本格的な暗黒期が到来していた。

84:{本編} 2016/05/04(水)17:38:29 igC
それからは、信頼度の上がるイベントが起こりやすい青マスを優先的に狙いつつ練習を重ねていった。

なんとか練習試合でも結果を出し、少しづつ手ごたえを掴んでいく望月ナイン。

冬が過ぎ、田所世代の3年生も卒業し、あっという間に入学式がやってきた。

俊足でチャンスメーカーの小笠原やチャンスC対左C持ちの原など、今年の望月高校も小粒ながら有望な新戦力に恵まれた。

永吉監督が就任して、六度目の夏が始まる。


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85:{本編} 2016/05/04(水)17:41:57 igC
チームの戦力判定は、正六角形のC。

中堅、強豪校と比べて孫色のないレベルで整った望月高校の陣容。

三回戦、同じCランクの大日本南高校に1-0で敗れ、高橋世代の夏は終わった。

昴「あと一本が出てれば……!」

杏奈「相手は中堅クラスだった、から。投手もちゃんと働いたし、紙一重だった」

守備崩壊気味の野手陣を立て直すために守備・投手力重視の方針をとり、扇の要である若林をキャプテンとした新チームがスタートした。

86:{本編} 2016/05/04(水)17:44:59 igC
秋大会。初戦、中堅校相手に10-9で綱渡りの勝利。

続く二回戦はエース小岩井が7回1/3を無失点の上にツーランホームランを放つという大活躍。快勝した。

昴「このチームも、やっと形ができてきたのか?」

杏奈「なんにせよ、結果が出たのが、一番。……気を引き締めて、地区大会もがんばらないと」

中村世代を超え、夢に見てきた甲子園へ。

チーム二年ぶり。地区大会進出に喜ぶナインたちを、秋晴れの空が祝福していた。

87:{本編} 2016/05/04(水)17:57:30 igC
秋。ドラフト会議では、パワーAの強打者、大関と郁原が指名され、プロの世界へ旅立とうとしていた。

冬の終わりには中堅校の恵比寿学園と練習試合を行い、1-0で完封勝ち。合宿で正捕手の若林がキャッチャーCを取得したこともあり、投手力が着実に向上していたのであった。

あっという間に季節は巡り、春。

高橋ら、三年生が卒業。1点差で涙をのんだ世代の無念を晴らす覚悟を新たにする。

昴「……内海がいるな」

杏奈「転生プロだから、この投手は使えない、ね」

入学式の時期になっていた。

88:{本編} 2016/05/04(水)17:58:55 igC
昴「お、アベレージヒッター持ってるやつがいる。チャンスGだし、一番打者で育てたいな」

杏奈「7人中4人が内気な性格してるって……すごい世代だね」

性格はともかく、投手の斎藤には軽い球が付いていたり、角元や戸田はそれぞれチャンスG、Fを持っていたりと欠点の多い世代であった。

杏奈「……これくらいのハンデがある方が、やる気出る……よ」

昴「マイナス特殊能力はプロ選手になったOBに消してもらえるしな。あまり考えすぎないでいくかぁ」

89:{本編} 2016/05/04(水)18:02:17 igC
新入部員の把握をした後、永吉監督はこれまで貯めてきた機材交換券を解放。練習環境を充実させるのであった。

昴「流石に、ここまできたら結果が欲しい」

杏奈「次の入学式で、新入生の合計も50人を超えるしね。……今年か来年で、勝って甲子園、行かないと」

ここまでやるのは、平山や藤井を擁した木戸世代以来のことだ。

本腰を入れた永吉監督の胸中は、気力と闘志に満ち満ちていた。

90:{本編} 2016/05/04(水)18:10:16 igC
伸びのあるストレートに加え、多彩な変化球を操る本格派の小岩井。

150km/h近い直球と卓越した制球力を誇り、闘志あふれる投球を信条とする駒形。

高橋、渡部の二年生がタイプの異なる二人の脇を固め、強固な投手陣を形成する。

打つ方では沼倉と原の二遊間コンビが躍動し、好打の近藤と強打の田村がランナーを返すという形ができていた。

更には、主将で四番。扇の要を務める若林がそれらの中心に陣取り、攻守にわたって存在感を示す。

こうして望月高校は夏予選を順調に勝ち進み、ベスト8へと手を伸ばした。


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91:{本編} 2016/05/04(水)18:14:20 igC
準々決勝。相手は、一年前に敗れた、大日本南。

緊迫した投手戦が続く中、望月高校は村川のツーランで3-1と勝ち越し、相手先発の沼倉をマウンドから引きずり下ろすことに成功する。

その後も若林の本塁打などで点を加えた望月高校は、村川の二本目のツーランによりコールド勝ちで高橋世代の雪辱を果たしたのであった。

92:{本編} 2016/05/04(水)18:15:56 igC
続く準決勝。強豪の足立北相手に、一三塁のピンチからコースヒットを含む四連打を食らった小岩井がノックアウト。

後を受けた駒形も変化球をレフトスタンドへ叩き込まれ、若林世代の夏はベスト4に進出したところで幕となった。

昴「最低限……だな」

杏奈「来年で50人枠の一区切りだし、なんとか、しなきゃ」

後任のキャプテンは小笠原とし、新たな望月高校がスタートラインに立つのであった。

93:{本編} 2016/05/04(水)18:19:07 igC
秋大会。

小笠原世代の望月ナインは、初戦で弱小校相手にぎりぎりの接戦を強いられる苦しい船出となる(試合は延長11回表に10点を加え勝利)。

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しかし、その後はエース高橋が安定。渡部もそこそこのリリーフで二回戦を勝利し、地区大会への進出を決めた。

94:{本編} 2016/05/04(水)18:22:47 igC
センバツへの出場を懸けた地区大会、一回戦。

相手はBランクの強豪、福生南。

昴「おっ」

杏奈「……んっ」

(カキィンッ)

昴「おぉ~」

杏奈「ホームラン……だね」

前年敗北した相手だったが、嘘のようにこれを攻め立て相手先発をノックアウト。

四番山口が4安打1ホーマー3打点と大暴れし、投げては高橋が8回途中まで1失点の好投。

最後は渡部が締め、望月高校は嬉しい秋季地区大会の初勝利を手にした。

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95:{本編} 2016/05/04(水)18:26:37 igC
続く地区大会二回戦。ここを勝てば、ほぼセンバツへの出場が決まるという試合だった。

相手は戦力ランクAの大都会電工。先発高橋が130球を越える熱投を見せるも、リードを奪えないまま4-1で8回の攻撃を迎える望月高校。

ここで、思わぬ好機が訪れる。

戸田を一塁に置き、角元のヒットエンドランが成功。その後一人が倒れるものの、小笠原の鋭い当たりが相手のタイムリーエラーを誘い、1点返して尚もツーアウト一二塁のチャンス。

2点差の終盤。打席には、今日タイムリーツーベースを放っている、村川。

相手先発、奥井の111球目を捉えた当たりは無情にも三塁手のグラブに収まった。

96:{本編} 2016/05/04(水)18:31:20 igC
4-2。甲子園のすぐ側まで歩み寄りながら、格上相手に手痛い敗戦。

昴「惜しい……なんて思っていられないよな」

杏奈「凡打でも、いい当たりは何本もあった。このままレベルアップさせていけば、必ず……!」

悔しさと、反骨の志に満ちた望月高校の秋が過ぎていった。

97:{本編} 2016/05/04(水)18:34:31 igC
結局、センバツに望月高校が呼ばれることはなく……春。卒業式。

強豪校を相手に堂々と戦い、現在の望月高校を築いた若林世代が学び舎を去っていった。

昴「若林、多分今まで育ててきた中で一番能力強かったよな」

杏奈「平山か若林が最強、だね。打てて、守れて、特殊能力もいいのが揃ってた」

昴「ベスト4で終わったけど、楽しい世代だったなぁ」

杏奈「プロ入りは若林、田村、近藤の三人だね。……がんばってね」

別れを惜しむのもつかの間。

すぐに、入学式がやってくる。

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98:{本編} 2016/05/04(水)18:38:00 igC
永吉監督には、ある決意があった。

杏奈「この世代で、終わりだから」

昴「確認するけど、この新入生が3年の夏を終えたら……ってことじゃない、よな?」

杏奈「ううん。この夏で、終わり。初めから決めてたことだし、これ以上やり続けても、やめ時が見えなくなる……から」

昴「……そうか」

杏奈「うん」

99:{本編} 2016/05/04(水)18:41:03 igC
昴「……わかった。前もって決めてたことだし、覚悟はしてたぜ」

杏奈「絶対絶対、今年の夏に甲子園……行くよ」

昴「おう!」

甲子園優勝を目指し、望月高校を指揮してきた。

未だその土を踏むことすら叶わないでいるが、少なくとも甲子園まではあと一歩の高さまで来ている。

ゲーム内の西暦は2021年。永吉監督が就任してから、八度目の春だった。

100:{本編} 2016/05/04(水)23:09:14 igC
種田、長谷川ら新入生を迎え入れた4月。これが最後になるであろう、望月ナインが監督と過ごす最後の春。

この時期の練習試合では、Bランクの強豪校、台東水産を相手に二度の試合を組んだ。

高橋、渡部はそれなりのピッチングを見せるものの相手の地力は高く、台東水産との二連戦はいずれも打撃戦となる。

しかし、小笠原ら望月ナインはいずれの試合も打ち勝ち連勝。夏の本番に向け、はずみをつける結果となった。

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101:{本編} 2016/05/04(水)23:19:03 igC
夏。ついに迎える、永吉監督最後の甲子園予選。

初戦は弱小の品川中央。就任初年度の頃はしのぎを削ってきたライバル校だが、16-0でこれを虐殺。

二回戦はCランクの中堅、足立大附属。9回までリードを奪われる展開となったが、最終回で中村の同点ホームランを皮切りに逆襲に転じ、7-5で勝利。

土砂降りの中で三回戦への切符を手にした望月高校は、練習試合から連勝を重ねたのもあって『強豪校』の評判を得るようになっていた。


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102:{本編} 2016/05/04(水)23:23:42 igC
三回戦。相手はCランクの大田農業。

中盤に高橋が崩れるが、打線が取り返す。7回には、先発の高橋が自らの汚名を雪ぐ勝ち越しツーランを放つ。

しかし、150球を越えた熱投を続けた高橋はリードした9回、ツーアウトまでこぎつけながらマウンドを降りる。後を受けるは、リリーフの渡部。

3点差、二死満塁の場面で登場した渡部は連打を浴び7-7とされ、なおもランナーは二三塁。

永吉監督の脳裏に、敗北の二文字がちらつく。

それでも選手を信じる中で投じられた、148km/hのストレート……。……結果は、セカンドゴロ。

103:{本編} 2016/05/04(水)23:31:27 igC
この場面をしのいだ望月高校はその裏、中村のサヨナラツーランで9-7の乱打戦を制した。

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永吉監督、勝利に喜びつつも危機感を抱く。

昴「去年の方が、投手成績がよかったよな」

杏奈「能力自体は、あの時から一回りも二回りも成長したのに……ね。やっぱり、このモードは難しいや」

昴「ただ、高橋にこだわりすぎた采配が悪かったっていうのもあるな」

杏奈「平山がエースだった時期にも、こんなこと、あったよね。本格派の投手一人に頼りすぎて、ずるずる失点していくの……」

昴「信頼度はだいぶ稼いできたし、守備も打撃も今は安定してる。正直不安はあるけど、この勢いのまま行くしかないな」

杏奈「ベスト8には入ったから、あと三つ……。この大会で、獲りに行くんだから……!」

不安を抱いてもしかたがない。ここまでくれば、勝つことに集中するしかないのだ。

104:{本編} 2016/05/04(水)23:38:25 igC
そして来たる準々決勝。相手は、中堅の神楽坂商工。

転生OBの高橋(慶)と杉下を軸に、固い守備力を誇っていた(ただし、転生プロの巨人矢野、日ハム杉谷が守るポジションは穴であった)。

現役時代は主に中日ドラゴンズに所属した、昭和の名投手、杉下茂。

『驚異の切れ味』と謳われたフォークを武器に、実働11年で215個の白星を手にした選手だった。

現在でも90歳を超える高齢でありながら、古巣ドラゴンズの指導に顔を出すこともあるという球史に名を残す偉大なお方である。

そんな御大の転生体を、望月ナインは一発攻勢で攻略。完膚なきまでに叩きのめし、12-2の6回コールドで二年連続となるベスト4進出を決めたのだった。


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105:{本編} 2016/05/04(水)23:43:46 igC
準決勝の相手は、意外性を武器にここまで勝ち進んできた文京中央だった。

戦力こそCランクであったが、ベスト4の相手としては物足りない基礎能力であったのも事実。

望月高校は、序盤から角元の連続ツーベースや山口のホームランなどで攻め立て、4点リードを奪う。

危うい場面もあったが、高橋から渡部への継投策もはまり、投手陣は1失点のみでその役目を果たしていた。

更に9回の猛攻で大量リードを奪った望月高校は、最後の守りで控え野手を出場させる余裕を見せる。

杏奈「舐めプじゃない……。後の試合で、控えの1,2年生たちの力を借りる場面が来るかもしれない、から」

昴「こういうときにちょっとずつでも信頼度を重ねていかないとな」

こうして、中村世代以来、実に五年ぶり。

夏季の甲子園予選大会決勝へ、望月高校は歩を進めたのだった。

106:{本編} 2016/05/04(水)23:49:15 igC
決勝戦。敵は、春に矛を交えた強豪、台東水産。

二度の練習試合で連勝した相手ではあるが、やはりその実力は本物だった。

連打を浴びたエース高橋は、3回に1点を失い先制を許す。

続く4回にも1点を失い、2点ビハインドの展開となる。

これに対し、望月高校もすかさず反撃。原の犠飛で1点を返し、2-1とするが……。

昴「……」

杏奈「こう着状態……」

2-1のスコアは変わらないまま、試合は我慢比べに突入。互いに譲らず9回の攻防へ移ることとなった。

107:{本編} 2016/05/04(水)23:53:07 igC
昴「勝ちたい」

杏奈「勝ちたい」

昴「……勝ちたい!」

杏奈「勝ちたい……!」

(キィンッ!)

昴「っ」

杏奈「……ああ」

108:{本編} 2016/05/04(水)23:59:06 igC
9回裏の攻撃。先頭の原が、フェンスギリギリの惜しいレフトフライに倒れる。

(カキィンッ)

ワンアウトから、四番山口がライトフェンス直撃のツーベース。同点のランナーを出す。

杏奈「角元、お願い……!」

昴「お前なら打てる。思い切り振ってこい」

打席には五番。アベレージヒッターの特殊能力を持つ、クールな性格の巧打者、角元。

究極の思考が、今解き放たれる。

109:{本編} 2016/05/05(木)00:00:48 73A
『選んだフォアボール!』

角元のバットは一度も振られないまま、一死一二塁と状況は変わる。

バテた相手先発の横田に代わり、マウンドに登るのは大河内。春の練習試合でも登板していた軟投派のサウスポーだ。

バッターは、一発のある下田。

(キィンッ)

一二塁間のゴロ。ファーストが横っ飛びで捕球し、一塁転送。

これで二死二三塁。剣が峰に立たされながらも、ワンヒットで逆転もありうるという極限の状況が出来あがった。

110:{本編} 2016/05/05(木)00:06:06 73A
バッターは戸田。下位打線に座る二年生ながら、打率4割を超える頼れる打者だった。

昴「戸田ぁ……」

杏奈「お願い、戸田」

昴「打ってくれ……」

杏奈「甲子園の、夢を」

投じられた、二球目。

(カキンッ)

111:{本編} 2016/05/05(木)00:11:31 73A
打球は転々と、ライト前へ転がっていった。

昴「回るか!? 回るか!?」

まずは三塁ランナーの山口。同点のホームイン。

二塁ランナーの、角元は。

杏奈「ま、わっ、」

昴「……たああああああああああああああああああああああ!!!!!」

112:{本編} 2016/05/05(木)00:13:57 73A
ライトが素早く処理し、懸命のバックホーム。ボールはノーバウンドで捕手のグラブに収まる。

ホームベース上。交錯。土煙。一瞬の沈黙。

試合の勝敗を分ける判定が下る。

113:{本編} 2016/05/05(木)00:15:50 73A
『アウト!!』

まさに打ちも打ったり、捕りも捕ったりの名場面だった。

114:{本編} 2016/05/05(木)00:18:56 73A
10回の表、台東水産の攻撃。8イニングを2失点で抑えた高橋の後を受け、マウンドには渡部が上がっていた。

前の1イニングを無失点で抑えた渡部だったが、この回、ヒットと四球で無死一二塁とされ、四番を迎える大ピンチ。

フルカウントからSFFで三振を奪い、まずはワンアウト。

続く打者に、スリーワンから投じた四球目。

(カキィンッ)

ショート原が跳ぶ。捕った球を、スナップスローでセカンドへ転送。

ベース上へ送られた白球は、二塁を守る戸田の手によってすぐさまファーストへ。

『アウト!』

最高の場面で、6-4-3のゲッツーが完成した。

115:{本編} 2016/05/05(木)00:22:11 73A
10回裏。望月高校の下位打線はあえなく三者凡退に倒れる。

続く11回も渡部が続投。ベンチへ退いている高橋の励ましを受け、ツーアウトまでこぎつけた、が……。

(キィンッ!!)

痛恨の一球。レフト前、均衡を破るタイムリーヒット。

後続を抑えたものの、あまりにも痛すぎる1点が台東水産のスコアボード上に記録された。

116:{本編} 2016/05/05(木)00:23:46 73A
その裏の望月高校。リードを許し迎える、2番からの好打順。

(カキンッ)

先頭の村川。捉えた当たりも、正面のセカンドゴロ。

昴「……勝つぞ。絶対、勝つ」

杏奈「原、打って」

(ガキィン)

先ほどファインプレーを見せた原への祈りは届かず、これもセカンドゴロ。

ツーアウトでランナーはなし。再びの剣が峰。土壇場の土壇場で、四番の山口へ打席が回った。

117:{本編} 2016/05/05(木)00:25:06 73A
(カキンッ)

『打ちました! 三遊間の当たり!』

昴「……っ」

杏奈「……」

『サードが捕った! 一塁送球!』

昴「…………」

杏奈「…………」

『アウトォ!』



望月高校の、夏が、終わった。

118:{本編} 2016/05/05(木)00:30:14 73A
13安打3得点。5安打2得点。11回、延長戦ゲームセット。

スコア上では、言い訳のできない負けだった。

だが、望月高校の選手たちは雄々しく戦い、そして、散った。

昴「オレは忘れないよ。高橋と渡部が投げた、今日の188球を」

杏奈「……それ、あの野球漫画のセリフ?」

昴「……」

杏奈「……ごめん」

昴「ははっ。いいよ、別に」

杏奈「……えへへ」

間違いなく、それまでで最も大きく、切実な敗戦だった。

それでも、永吉監督の表情は……どこか清々しく、晴れやかであった。


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119:{本編} 2016/05/05(木)00:32:10 73A
キャプテンを下田に任命し、教育方針をバランス重視に決定。

それが、望月高校で果たす永吉監督最後の仕事であった。

120:{本編} 2016/05/05(木)00:36:13 73A
監督成績:45勝22敗2分け 勝率.652

公式戦成績:29勝15敗、勝率.659

夏季大会最高成績:都大会予選準優勝

秋季大会最高成績:地区大会二回戦進出

8年間の任期で12人のプロ選手を送り出し、野球部は『強豪校』と呼ばれるようにもなった。

その原動力となったのは間違いなく、永吉監督と、その教え子たちだ。

彼が球児たちと共に描き、切り拓いてきた道を、これからの望月高校はどのように歩んでいくのだろうか……。


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121:{本編} 2016/05/05(木)00:39:04 73A
東東京地区。どこかにある、とある高校のグラウンド。

白球を追う球児たちの声がする。気持ちのいい金属音が響き、勢いよく飛んでいくボールが、空へ溶けていく。

夏日に照らされたグラウンドを、一陣の風が吹き抜けていった。



(了)

122:{雑感} 2016/05/05(木)00:43:18 73A
昴「まぁ~……熱いゲームだったな。うまくいかない時期や投手が打たれたときはイラついたけど、それも含めて楽しかった」

杏奈「甲子園優勝どころか、甲子園の土も踏めなかったのは……やっぱり残念、だったな」

昴「選手との信頼が大事だってことに、もっと早く気付いていたらなぁ」

杏奈「昔の栄冠ナインもプレイしてたけど、わかってたつもりでわかってなかった……ね」

昴「うん」

杏奈「……今思うと、木戸世代のつまずきが本当に痛かった、な」

昴「なまじっか強い選手ができたから、個人個人の能力さえ鍛えれば勝てると思っちゃったんだな」

杏奈「落とし穴にはまると、辛いからね。プレイ期間の縛りもあったし、本当に大きいミスだった」

昴「にしても、手に汗握る場面がいっぱいあったな~。中村世代決勝の、木戸の同点満塁ホームランはまだ覚えてるよ」

杏奈「杏奈は、最後の試合で渡部が敵の四番を三振にとったシーン……かな。その後のゲッツーもよかったけど、四番を三振に切ったのは、熱かった……」

昴「そんな風に振り返ると勝てなかった世代が不遇になるけど、でも、いい選手もいっぱいいたよな」

杏奈「……うん。そう、だね」

123:{雑感} 2016/05/05(木)00:45:42 73A
杏奈「若林世代の田村は、消去法の四番だけどハマってた、よね。3年の夏は若林に四番を譲ってたけど、いいバッター……だった」

昴「高橋世代も地味だけど好きだったなぁ。木戸、田所と二世代続けて初めの方で負けて、巻き返そうって時期の世代だった」

杏奈「OBたちが助けてくれたときは、面白いと思うこともあったよね」

昴「浅倉がならずものになってたり、西野が占いやってたりな」

杏奈「アイドルになったマネージャーは、本当に役に立った、よね。練習効率を上げてくれるし、いつも狙ってた気がする」

昴「オレが覚えてるのはさ、あれ。プロ選手のマスに止まったら、仁後が一軍の試合に出られないってグチって選手のテンション下げてさ」

杏奈「……エースでキャプテンだった中村がスカウトになってたのとか、意外だった……な。卒業式のときに進路出るけど、普通はそんなの見ないし……」

昴「パン屋になった山崎が来てくれたときは、心の中で『ヤマザキ春のパン祭り♪』とか歌っちゃったりして」

杏奈「ふふっ。……うん。二人でやった栄冠ナイン、楽しかったね……」

昴「……おう!」

124:名無しさん@おんJ 2016/05/05(木)00:55:17 73A
というわけで、このSSはこれでおしまいです。

他の場所でやるかどうか悩みながらの投稿でしたが、画像も含めて快適に投稿できたのでおんJでやってよかったかなと思いました。

大分数は少ないようですが、読んでくださった方、一目でもこのスレを見てくださった方、本当にありがとうございました。

125:名無しさん@おんJ 2017/02/28(火)23:24:09 7O4
おつ

126:名無しさん@おんJ 2017/03/01(水)19:21:23 8yR
永吉のマイライフ
なんか聞き覚えあるな

0:風吹けばナナC 2009/05/13(水) 11:48:22.64 ID:hSdUYTwy