59: ◆GWARj2QOL2 2016/03/15(火) 21:55:54.16 ID:syZ/1LToO
…。
「えーい!」バシッ
…。
「やー!」バシッ
…。
「こら!ちょっかい出したらダメ!!」
…。
「すいません…うちの子、本当にヤンチャで…ほら!謝りなさい!」
「ごめんなさーい…」
…。
「ほら!今度はあっちのお店に行ってみようね!」
「はーい!」
…。
「…」クルッ
?
「…」ベー
…。
「えーい!」バシッ
…。
「やー!」バシッ
…。
「こら!ちょっかい出したらダメ!!」
…。
「すいません…うちの子、本当にヤンチャで…ほら!謝りなさい!」
「ごめんなさーい…」
…。
「ほら!今度はあっちのお店に行ってみようね!」
「はーい!」
…。
「…」クルッ
?
「…」ベー
…。
60: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/15(火) 21:57:33.64 ID:lrNTRpCnO
続ききたか!
61: ◆GWARj2QOL2 2016/03/15(火) 21:58:41.48 ID:syZ/1LToO
友紀「ああああああああああ!!!!」
右京「どうかされましたか?」ペラ
友紀「どうかじゃないよ!これって本当にアイドルの仕事なの!?」
右京「ええ。れっきとしたお仕事ですよぉ…」ペラ
友紀「だってさ、こういうのってたまにインターネットサイトとかでバイト募集してるじゃん!」
右京「それはあくまで一般のイベントのみなんですよ。こういったアイドル関係のイベントにおいては、身内を使った方が信頼出来ますからねぇ…」ペラ
友紀「へー…じゃなくてさ!」
右京「どうしましたか?」
友紀「いや、これってさ!どこのプロジェクトの人達もやりたがらなくて断った仕事なんでしょ!?」
右京「ええ。屋外とはいえ人混みの多い中でのイベント。そのような密閉された着ぐるみに身を包めば、体調を崩すかもしれません」
友紀「…それをアタシに回すの…?」
右京「貴方は新人。僕は煙たがられる社員。これだけでも十分理由になると思いますがねぇ?」
友紀「…じゃあさ、いつになったら本格的に活動出来るの?」
右京「そうですねぇ…」
友紀「…」
右京「…それは、これから探すとしましょう」
友紀「…えええ…?」
右京「とにかく、水分補給は大事ですが、あまり摂り過ぎないよう注意して下さい。次の休憩は2時間後らしいですからねぇ」
友紀「汗で消えるよ…。…あー、確かに現実と理想って違うなー…」
右京「そうですかねぇ…」
友紀「だってほら、アイドルってさ、こう…歌ったり踊ったり、司会やったりさ?」
右京「誰しも初めからそんな大役を任されるわけではありませんよ」
友紀「そうなんだけどさぁ…」
右京「君は足し算を飛ばして割り算を学びますか?」
友紀「…これって、足し算かなぁ…」
右京「少なくとも、何の経験も無い君が休憩中こうして愚痴を吐きながらでも見逃してもらえる簡単なお仕事だと思いますがねぇ?」
友紀「うっ…もしかしてスタッフの人に聞かれてた?」
右京「ええ。とても」
友紀「…あー…何かやらかしちゃったなぁ…」
右京「そう思うなら、これから一生懸命やることです」
友紀「…例えば…どうやって?」
右京「そうですねぇ…例えば、先程の子供」
友紀「?」
右京「どうかされましたか?」ペラ
友紀「どうかじゃないよ!これって本当にアイドルの仕事なの!?」
右京「ええ。れっきとしたお仕事ですよぉ…」ペラ
友紀「だってさ、こういうのってたまにインターネットサイトとかでバイト募集してるじゃん!」
右京「それはあくまで一般のイベントのみなんですよ。こういったアイドル関係のイベントにおいては、身内を使った方が信頼出来ますからねぇ…」ペラ
友紀「へー…じゃなくてさ!」
右京「どうしましたか?」
友紀「いや、これってさ!どこのプロジェクトの人達もやりたがらなくて断った仕事なんでしょ!?」
右京「ええ。屋外とはいえ人混みの多い中でのイベント。そのような密閉された着ぐるみに身を包めば、体調を崩すかもしれません」
友紀「…それをアタシに回すの…?」
右京「貴方は新人。僕は煙たがられる社員。これだけでも十分理由になると思いますがねぇ?」
友紀「…じゃあさ、いつになったら本格的に活動出来るの?」
右京「そうですねぇ…」
友紀「…」
右京「…それは、これから探すとしましょう」
友紀「…えええ…?」
右京「とにかく、水分補給は大事ですが、あまり摂り過ぎないよう注意して下さい。次の休憩は2時間後らしいですからねぇ」
友紀「汗で消えるよ…。…あー、確かに現実と理想って違うなー…」
右京「そうですかねぇ…」
友紀「だってほら、アイドルってさ、こう…歌ったり踊ったり、司会やったりさ?」
右京「誰しも初めからそんな大役を任されるわけではありませんよ」
友紀「そうなんだけどさぁ…」
右京「君は足し算を飛ばして割り算を学びますか?」
友紀「…これって、足し算かなぁ…」
右京「少なくとも、何の経験も無い君が休憩中こうして愚痴を吐きながらでも見逃してもらえる簡単なお仕事だと思いますがねぇ?」
友紀「うっ…もしかしてスタッフの人に聞かれてた?」
右京「ええ。とても」
友紀「…あー…何かやらかしちゃったなぁ…」
右京「そう思うなら、これから一生懸命やることです」
友紀「…例えば…どうやって?」
右京「そうですねぇ…例えば、先程の子供」
友紀「?」
62: ◆GWARj2QOL2 2016/03/15(火) 21:59:32.68 ID:syZ/1LToO
右京「彼は貴方が無抵抗であるのを確信し、蹴るという行動に移りました」
友紀「その堅苦しい言い方辞めてよ…」
右京「本来イベントの潤滑油でなければならない着ぐるみ達が、ただ棒のように立ち尽くしていてはそうなるのも当然だと思いますがねぇ」
友紀「でもさ、着ぐるみなんて誰が見たりするの?」
右京「見ていたからこそ、君の所へやってきたんじゃありませんか?」
友紀「うーん…」
右京「ただ仕事をすれば良いというものではありません。常にベストを尽くし、出せる知恵は全て出してやりきりましょう」
友紀「大袈裟じゃないかなあ…」
右京「塵も積もれば山となる…。小さな仕事でも、やり続ければそれは大きな財産となります」
友紀「でもほら、こんな塵じゃ風に吹かれて終わりだよ…」
右京「今はともかく、与えられた仕事をこなすのみです。そうでなくてはあのような舞台にはいつまでも立てませんよ?」
友紀「?」
『悪い子はタイホしちゃうぞー!バキューン☆』
友紀「…はーい…」カポッ
右京「ああ、それと」
友紀「?」
右京「昼休憩の時間が少し短くなったそうですから、弁当は僕が持ってきましょう。少しでも休憩時間を長くしなければなりませんから」
友紀「…はぁぃ…」
友紀「その堅苦しい言い方辞めてよ…」
右京「本来イベントの潤滑油でなければならない着ぐるみ達が、ただ棒のように立ち尽くしていてはそうなるのも当然だと思いますがねぇ」
友紀「でもさ、着ぐるみなんて誰が見たりするの?」
右京「見ていたからこそ、君の所へやってきたんじゃありませんか?」
友紀「うーん…」
右京「ただ仕事をすれば良いというものではありません。常にベストを尽くし、出せる知恵は全て出してやりきりましょう」
友紀「大袈裟じゃないかなあ…」
右京「塵も積もれば山となる…。小さな仕事でも、やり続ければそれは大きな財産となります」
友紀「でもほら、こんな塵じゃ風に吹かれて終わりだよ…」
右京「今はともかく、与えられた仕事をこなすのみです。そうでなくてはあのような舞台にはいつまでも立てませんよ?」
友紀「?」
『悪い子はタイホしちゃうぞー!バキューン☆』
友紀「…はーい…」カポッ
右京「ああ、それと」
友紀「?」
右京「昼休憩の時間が少し短くなったそうですから、弁当は僕が持ってきましょう。少しでも休憩時間を長くしなければなりませんから」
友紀「…はぁぃ…」
63: ◆GWARj2QOL2 2016/03/15(火) 22:00:33.81 ID:syZ/1LToO
アタシがアイドルになって、はや2週間が経過した。
初めの1週間は、宣材写真を撮ったり、いろんな説明を聞いたりした。
そしてそこからは、トレーナーについてもらって、アイドルの基本的な動きを学んだ。
ダンスや、歌。
表情や、表現。
最初は物珍しさから、何でも楽しかった。
怒られることも、苦じゃなかった。
だけど、人間3日も過ぎると環境にいい加減慣れてくる。
そして、怒られるのが辛くなりだした時、アタシに初めての仕事が舞い込んできた。
初めての仕事は、新発売のジュースの店頭販売。
何の興味もないそれを褒めちぎるのは演技力の無いアタシにとっては至難の技で、勿論後でスタッフから直々にお叱りを受けた。
右京さんはアタシと一緒に頭を下げ、そして何事も無かったかのように終わる。
…参ったなあ…。
アイドルって、もっと簡単になれるって思ってた。
「…」
こうやって細々と小さい仕事やって、ただ延々と日々が過ぎてくのかな…。
「…」
右京さんは、アタシをどうする気なんだろう。
…上手いこと言って、上手いこと利用する…。
「…!」ブンブンブンブン
違う。
それは違う。
右京さんだってギリギリなんだ。
社会経験が少ないアタシにだって分かる。
「…」
あれはどう見たって、そういう部屋だ。
いらない社員を追い出すような、そんな部屋だ。
そんな所にいる人が、最後まで足掻こうとしてるんだ。
一緒に足掻こうとしてるアタシがこんなんじゃ、右京さんに迷惑をかけることになる。
「…ねーねー」
「?」
その時、誰かがアタシの手を引いた。
耳には子供らしき声が聞こえる。
…これって、さっきのちょっかい出してきた子供?
…あれ?何で前が見えないんだろ…?
「…首が後ろ向いてるよ?」
「え?」
初めの1週間は、宣材写真を撮ったり、いろんな説明を聞いたりした。
そしてそこからは、トレーナーについてもらって、アイドルの基本的な動きを学んだ。
ダンスや、歌。
表情や、表現。
最初は物珍しさから、何でも楽しかった。
怒られることも、苦じゃなかった。
だけど、人間3日も過ぎると環境にいい加減慣れてくる。
そして、怒られるのが辛くなりだした時、アタシに初めての仕事が舞い込んできた。
初めての仕事は、新発売のジュースの店頭販売。
何の興味もないそれを褒めちぎるのは演技力の無いアタシにとっては至難の技で、勿論後でスタッフから直々にお叱りを受けた。
右京さんはアタシと一緒に頭を下げ、そして何事も無かったかのように終わる。
…参ったなあ…。
アイドルって、もっと簡単になれるって思ってた。
「…」
こうやって細々と小さい仕事やって、ただ延々と日々が過ぎてくのかな…。
「…」
右京さんは、アタシをどうする気なんだろう。
…上手いこと言って、上手いこと利用する…。
「…!」ブンブンブンブン
違う。
それは違う。
右京さんだってギリギリなんだ。
社会経験が少ないアタシにだって分かる。
「…」
あれはどう見たって、そういう部屋だ。
いらない社員を追い出すような、そんな部屋だ。
そんな所にいる人が、最後まで足掻こうとしてるんだ。
一緒に足掻こうとしてるアタシがこんなんじゃ、右京さんに迷惑をかけることになる。
「…ねーねー」
「?」
その時、誰かがアタシの手を引いた。
耳には子供らしき声が聞こえる。
…これって、さっきのちょっかい出してきた子供?
…あれ?何で前が見えないんだろ…?
「…首が後ろ向いてるよ?」
「え?」
64: ◆GWARj2QOL2 2016/03/15(火) 22:01:18.66 ID:syZ/1LToO
「ちょっとさ…いくらなんでもあんな風に仕事されちゃこっちも堪らないよ」
「すいません…」
「申し訳ありません」
また、やっちゃった。
思いっきり首を振った時に顔部分が後ろ向いちゃったんだなあ。
「…」
隣で深々と頭を下げる右京さんを見ていると、本当に心苦しくなる。
自分よりも年下だろうはずの人に、何の迷いもなく頭を下げてる。
しかもそれは、アタシのせい。
そしてそれは、アタシの為。
もっとちゃんとやらなきゃ、というのはちょっと遅かったみたいで、現場リーダーの説教を小一時間聞かされた。
「…まあ、その子反省しているみたいだしさ、午後からはちゃんとやってよ?こんなんでも仕事なんだから…」
「はい…」
「申し訳ありませんでした」
…ホントこの半日で、アタシはどれだけ迷惑かけたんだろう。
「すいません…」
「申し訳ありません」
また、やっちゃった。
思いっきり首を振った時に顔部分が後ろ向いちゃったんだなあ。
「…」
隣で深々と頭を下げる右京さんを見ていると、本当に心苦しくなる。
自分よりも年下だろうはずの人に、何の迷いもなく頭を下げてる。
しかもそれは、アタシのせい。
そしてそれは、アタシの為。
もっとちゃんとやらなきゃ、というのはちょっと遅かったみたいで、現場リーダーの説教を小一時間聞かされた。
「…まあ、その子反省しているみたいだしさ、午後からはちゃんとやってよ?こんなんでも仕事なんだから…」
「はい…」
「申し訳ありませんでした」
…ホントこの半日で、アタシはどれだけ迷惑かけたんだろう。
65: ◆GWARj2QOL2 2016/03/15(火) 22:02:15.70 ID:syZ/1LToO
友紀「ごめんなさーい…」モグモグ
右京「過ぎてしまったことをとやかく言うつもりはありません。君も反省しているようですからねぇ」
友紀「…その、これからどうなるんだろって不安が多過ぎて…」モグモグ
右京「それで今の仕事を台無しにしていれば、いつかその不安は本当の事になりますよ」
友紀「う…」モグ…
右京「今からさあ頑張ろうとしている君にこんなことを言うのは酷かもしれませんが、嫌ならいつでも辞めて頂いて構いません」
友紀「…」
右京「君が限界を感じたなら、一刻も早く辞表を提出すべきです」
友紀「…」
右京「ただ、限界というのを決めるのは自分です」
友紀「…んー…」
右京「僕は限界というものは無いと思っています。もし限界があるとするならば…」
友紀「…」
右京「それは、諦めた瞬間でしょう」
友紀「…」
右京「君は、諦めましたか?」
友紀「…まだ」
右京「なら、また始めましよう。歩き続ければ、必ず光は見えてきます」
友紀「…ん…」
右京「おやおや…相当疲れたようですねぇ」
友紀「疲れたっていうか、堪えたっていうか…」
右京「ああ、なるほどなるほど…」
友紀「体力は結構自信あるんだよ。けどさっきや今みたいに淡々と怒られるのは慣れてないよー…」モグモグ
右京「君らしいですねぇ…」
友紀「…そういえばさ、朝何の本見てたの?」
右京「ああ、そのことですか…。…これです」
友紀「?…これ…346の…?」
右京「ええ。346プロダクションで研修時に使われる教科書のようなものです」
友紀「なんたってそんなの今更…?」
右京「新人アイドルをデビューさせるんです。僕も今一度新人のような気持ちで仕事をしたいと思いましてねぇ」
友紀「へー…」
『おーい』コンコン
友紀「?」
右京「どうぞ」
右京「過ぎてしまったことをとやかく言うつもりはありません。君も反省しているようですからねぇ」
友紀「…その、これからどうなるんだろって不安が多過ぎて…」モグモグ
右京「それで今の仕事を台無しにしていれば、いつかその不安は本当の事になりますよ」
友紀「う…」モグ…
右京「今からさあ頑張ろうとしている君にこんなことを言うのは酷かもしれませんが、嫌ならいつでも辞めて頂いて構いません」
友紀「…」
右京「君が限界を感じたなら、一刻も早く辞表を提出すべきです」
友紀「…」
右京「ただ、限界というのを決めるのは自分です」
友紀「…んー…」
右京「僕は限界というものは無いと思っています。もし限界があるとするならば…」
友紀「…」
右京「それは、諦めた瞬間でしょう」
友紀「…」
右京「君は、諦めましたか?」
友紀「…まだ」
右京「なら、また始めましよう。歩き続ければ、必ず光は見えてきます」
友紀「…ん…」
右京「おやおや…相当疲れたようですねぇ」
友紀「疲れたっていうか、堪えたっていうか…」
右京「ああ、なるほどなるほど…」
友紀「体力は結構自信あるんだよ。けどさっきや今みたいに淡々と怒られるのは慣れてないよー…」モグモグ
右京「君らしいですねぇ…」
友紀「…そういえばさ、朝何の本見てたの?」
右京「ああ、そのことですか…。…これです」
友紀「?…これ…346の…?」
右京「ええ。346プロダクションで研修時に使われる教科書のようなものです」
友紀「なんたってそんなの今更…?」
右京「新人アイドルをデビューさせるんです。僕も今一度新人のような気持ちで仕事をしたいと思いましてねぇ」
友紀「へー…」
『おーい』コンコン
友紀「?」
右京「どうぞ」
66: ◆GWARj2QOL2 2016/03/15(火) 22:03:20.52 ID:syZ/1LToO
アタシが昼休憩を取っている時、不意に休憩室の扉がノックされた。
さっきの現場を仕切っているリーダーさんかなと思ったけど、この声は女の人だ。
…誰だろ?
「どーもー。杉下係長ー」ガチャ
…あれ?
この人さっき、舞台に立ってた…。
「ああ、片桐さん。これはこれは…」
「ん…まあ、噂には聞いてたけど…本当にデビューさせたのね」
…片桐…。
何処かで聞いたことあるような…。
「…あ!」
「何よ。挨拶も無し?」
「…あ、す、すいません!えっと…は、はず…初めまして!」
「…」
「…」
「…」
…うわー…噛んだー…。
さっきの現場を仕切っているリーダーさんかなと思ったけど、この声は女の人だ。
…誰だろ?
「どーもー。杉下係長ー」ガチャ
…あれ?
この人さっき、舞台に立ってた…。
「ああ、片桐さん。これはこれは…」
「ん…まあ、噂には聞いてたけど…本当にデビューさせたのね」
…片桐…。
何処かで聞いたことあるような…。
「…あ!」
「何よ。挨拶も無し?」
「…あ、す、すいません!えっと…は、はず…初めまして!」
「…」
「…」
「…」
…うわー…噛んだー…。
67: ◆GWARj2QOL2 2016/03/15(火) 22:04:15.98 ID:syZ/1LToO
友紀「あの、今後ともよろしくお願いします…」
早苗「分かった、分かったわよ。…それにアタシだってまだデビューしてそんな長いわけじゃないから」
友紀「えっ…」
右京「彼女がデビューしたのがおよそ6ヶ月前ですねぇ」
早苗「ほー。にしてもよく覚えてるわね…」
右京「ええ。情報や物は一度見たら忘れられないものでして…」
早苗「…警察やった方が向いてると思うわよ?」
右京「…どうですかねぇ…」
友紀「そ、そうなんですね…で、でもアタシより先輩…」
早苗「そりゃそうだけどさ。それならもうちょっと気張りなさいよ。スタッフに連れて行かれる着ぐるみなんて聞いたことないわよ」
友紀「あ…す、すいませんでした!」
早苗「あーいいわよもう。どうせここの責任者に怒鳴られたんでしょ?」
右京「怒鳴られたというよりは、窘められたという方が正解ですかねぇ」
早苗「余計な事言わなくていーの」
右京「おやおや…」
早苗「…ん、まー…ね?それでさ、アタシ午前で仕事終わりなのよ」
友紀「あ…え、えっと、お疲れ様でした…」
早苗「あー違う違う!そうじゃなくってさ…」
右京「?」
早苗「ほら、午後になってまたアンタがやらかしたらアレだから」
友紀「え…」
早苗「だからねー…んー…」
右京「…」
早苗「アタシが一緒にやったげる」
友紀「…え…」
右京「…!」
早苗「分かった、分かったわよ。…それにアタシだってまだデビューしてそんな長いわけじゃないから」
友紀「えっ…」
右京「彼女がデビューしたのがおよそ6ヶ月前ですねぇ」
早苗「ほー。にしてもよく覚えてるわね…」
右京「ええ。情報や物は一度見たら忘れられないものでして…」
早苗「…警察やった方が向いてると思うわよ?」
右京「…どうですかねぇ…」
友紀「そ、そうなんですね…で、でもアタシより先輩…」
早苗「そりゃそうだけどさ。それならもうちょっと気張りなさいよ。スタッフに連れて行かれる着ぐるみなんて聞いたことないわよ」
友紀「あ…す、すいませんでした!」
早苗「あーいいわよもう。どうせここの責任者に怒鳴られたんでしょ?」
右京「怒鳴られたというよりは、窘められたという方が正解ですかねぇ」
早苗「余計な事言わなくていーの」
右京「おやおや…」
早苗「…ん、まー…ね?それでさ、アタシ午前で仕事終わりなのよ」
友紀「あ…え、えっと、お疲れ様でした…」
早苗「あー違う違う!そうじゃなくってさ…」
右京「?」
早苗「ほら、午後になってまたアンタがやらかしたらアレだから」
友紀「え…」
早苗「だからねー…んー…」
右京「…」
早苗「アタシが一緒にやったげる」
友紀「…え…」
右京「…!」
68: ◆GWARj2QOL2 2016/03/15(火) 22:05:15.01 ID:syZ/1LToO
初めはただの軽い冗談かなと思った。
けど早苗さんは新たに用意された着ぐるみに何の躊躇もなく着替えていきなりアタシはの手を引いて走り出した。
何をするつもりなのか、というのを聞くのは野暮かなと思ってやめておいたけど。
「わー!クマと犬が走ってるー!」
「追いかけろー!」
…この様子を見ると、何となく分かる。
きっと、早苗さんもこういった仕事をしてきたんだなって。
だから、アタシに見本を見せたかったんだなって。
自分も同じ体験をしたんだぞって、行動で表してる。
そりゃ、さっきのやり取りでこの人が右京さんみたいに言葉で表すよりは、こうした方が得意ってのは分かるよ。
…だけど…。
「わー!」
「捕まえろー!」
これが、イベントの潤滑油になるのかな…?
『おやー?ワンちゃんとクマさんが会場を闊歩してますよー!?』
「待てー!」
「わーい!」
…。
…この追いかけっこ、いつまでやるの?
けど早苗さんは新たに用意された着ぐるみに何の躊躇もなく着替えていきなりアタシはの手を引いて走り出した。
何をするつもりなのか、というのを聞くのは野暮かなと思ってやめておいたけど。
「わー!クマと犬が走ってるー!」
「追いかけろー!」
…この様子を見ると、何となく分かる。
きっと、早苗さんもこういった仕事をしてきたんだなって。
だから、アタシに見本を見せたかったんだなって。
自分も同じ体験をしたんだぞって、行動で表してる。
そりゃ、さっきのやり取りでこの人が右京さんみたいに言葉で表すよりは、こうした方が得意ってのは分かるよ。
…だけど…。
「わー!」
「捕まえろー!」
これが、イベントの潤滑油になるのかな…?
『おやー?ワンちゃんとクマさんが会場を闊歩してますよー!?』
「待てー!」
「わーい!」
…。
…この追いかけっこ、いつまでやるの?
69: ◆GWARj2QOL2 2016/03/15(火) 22:06:22.80 ID:syZ/1LToO
早苗「ゼーッ…ハーッ…」
友紀「そんなになるくらいならどうしてあんなこと…」
早苗「これくらいやってりゃあの口うるさそうな責任者も嫌でもまたアンタ使おうかなってなるでしょうよ」
友紀「あ…」
早苗「いーい?芸能人の仕事ってのは棚から牡丹餅みたいなもんじゃないの。自分で手に入れなきゃ始まらないのよ」
友紀「…」
早苗「とにかく与えられた仕事を「一所懸命」こなしてね。…あ、これアタシの好きなタレントの造語だけど」
友紀「あー…はい」
早苗「そうやってやり続ければ、「ああこいつ頑張ってんな」って、また新しい仕事くれるようになんのよ」
友紀「…ありがとうございます」
早苗「分かったなら良いわよ。アタシもアンタに質問あったし」
友紀「え…アタシなんかに?」
早苗「そ。アンタなんかに」
友紀「でも…特には…」
早苗「何言ってんのよ。あの杉下右京が初めてご指名したアイドルなのよ。絶対なんかあるわ」
友紀「…?」
早苗「あら…その様子だと杉下係長がなんて呼ばれてるかも知らない?」
友紀「…そんなの、知りません」フイ
早苗「えー、そんな怒んないでよ。ちょっと興味があるだけなんだって」
友紀「…別に、何も特別なことは…」
早苗「そお?…あ、まだ杉下係長の本質までは知らないか…」
友紀「…どうして、みんなそうやって杉下係長を悪く言うんですか?」
早苗「え?」
友紀「あの人がどんな人間かも知らないくせに。変な噂だけは信じて…」
早苗「ほー…」
友紀「…何ですか?」
早苗「随分買ってるみたいじゃない」
友紀「そりゃ、アタシの半生預けてんですから…」
早苗「ふーん…まあ、大事よね。そういう信頼も」
友紀「…だから、正直嫌です。右京さんの悪口聞くのは」
早苗「悪口だなんて言わないわよ。ただ本当のことを…」
友紀「そろそろ子供達に気づかれますね。行きましょう!」グイッ
早苗「オウッ!?まだ無理!横っ腹痛い!!」
友紀「そんなになるくらいならどうしてあんなこと…」
早苗「これくらいやってりゃあの口うるさそうな責任者も嫌でもまたアンタ使おうかなってなるでしょうよ」
友紀「あ…」
早苗「いーい?芸能人の仕事ってのは棚から牡丹餅みたいなもんじゃないの。自分で手に入れなきゃ始まらないのよ」
友紀「…」
早苗「とにかく与えられた仕事を「一所懸命」こなしてね。…あ、これアタシの好きなタレントの造語だけど」
友紀「あー…はい」
早苗「そうやってやり続ければ、「ああこいつ頑張ってんな」って、また新しい仕事くれるようになんのよ」
友紀「…ありがとうございます」
早苗「分かったなら良いわよ。アタシもアンタに質問あったし」
友紀「え…アタシなんかに?」
早苗「そ。アンタなんかに」
友紀「でも…特には…」
早苗「何言ってんのよ。あの杉下右京が初めてご指名したアイドルなのよ。絶対なんかあるわ」
友紀「…?」
早苗「あら…その様子だと杉下係長がなんて呼ばれてるかも知らない?」
友紀「…そんなの、知りません」フイ
早苗「えー、そんな怒んないでよ。ちょっと興味があるだけなんだって」
友紀「…別に、何も特別なことは…」
早苗「そお?…あ、まだ杉下係長の本質までは知らないか…」
友紀「…どうして、みんなそうやって杉下係長を悪く言うんですか?」
早苗「え?」
友紀「あの人がどんな人間かも知らないくせに。変な噂だけは信じて…」
早苗「ほー…」
友紀「…何ですか?」
早苗「随分買ってるみたいじゃない」
友紀「そりゃ、アタシの半生預けてんですから…」
早苗「ふーん…まあ、大事よね。そういう信頼も」
友紀「…だから、正直嫌です。右京さんの悪口聞くのは」
早苗「悪口だなんて言わないわよ。ただ本当のことを…」
友紀「そろそろ子供達に気づかれますね。行きましょう!」グイッ
早苗「オウッ!?まだ無理!横っ腹痛い!!」
70: ◆GWARj2QOL2 2016/03/15(火) 22:07:32.98 ID:syZ/1LToO
「…いやー…午前とは打って変わって違うねー…」
右京「恐らく先輩アイドルに発破をかけてもらったのでしょう」
「彼女、元警察官だからね。後輩の面倒を見たくなったんじゃないかな…」
右京「そうでしょうか?」
「?」
右京「犬に引っ張られる熊というのは、いかがなものですかねぇ」
「あー…」
右京「…しかし、元警察官の方ですか…」
「うん?もしかして…知らなかった?」
右京「いえいえ。改めて彼女の行動力に感嘆したんですよ」
「そうだねぇ。とにかく明るくて、場を盛り上げようと頑張ってくれるからねぇ」
右京「…成る程」
「あれは間違いなく近い将来大物になるよ」
右京「ええ。僕もそう思います。…ああ、それと」
「ん?何?」
右京「先程姫川君には言って聞かせました。まだ現実に向き合えてはいないようですが…」
「まあ、そりゃそうだよ。ただああやってさ、がむしゃらにやっていけばみんなの見る目も変わるんじゃないかな」
右京「でしたら、また彼女に目を向けていただけると助かります」
「あっはっは!そんな言い方されたら断れないなー…」
右京「今の僕は、プロデューサーですからねぇ…」
「そうだねぇ…今度、地下の小さいイベントだけど、それの司会やらせてみようか?」
右京「おやおや…それはありがたい限りです」
「今度は顔も出すし、台本があるにしても舞台の上では全部自分でやらなきゃならない。小さいけど責任重大だよー…?」
右京「ええ。覚悟しています」
「じゃあ、僕向こうのブース行ってくるから、彼女達はよろしくね」
右京「ええ。僕でよろしければ」
「何かあったら係員に伝えておいてねー」
右京「ええ」
右京「恐らく先輩アイドルに発破をかけてもらったのでしょう」
「彼女、元警察官だからね。後輩の面倒を見たくなったんじゃないかな…」
右京「そうでしょうか?」
「?」
右京「犬に引っ張られる熊というのは、いかがなものですかねぇ」
「あー…」
右京「…しかし、元警察官の方ですか…」
「うん?もしかして…知らなかった?」
右京「いえいえ。改めて彼女の行動力に感嘆したんですよ」
「そうだねぇ。とにかく明るくて、場を盛り上げようと頑張ってくれるからねぇ」
右京「…成る程」
「あれは間違いなく近い将来大物になるよ」
右京「ええ。僕もそう思います。…ああ、それと」
「ん?何?」
右京「先程姫川君には言って聞かせました。まだ現実に向き合えてはいないようですが…」
「まあ、そりゃそうだよ。ただああやってさ、がむしゃらにやっていけばみんなの見る目も変わるんじゃないかな」
右京「でしたら、また彼女に目を向けていただけると助かります」
「あっはっは!そんな言い方されたら断れないなー…」
右京「今の僕は、プロデューサーですからねぇ…」
「そうだねぇ…今度、地下の小さいイベントだけど、それの司会やらせてみようか?」
右京「おやおや…それはありがたい限りです」
「今度は顔も出すし、台本があるにしても舞台の上では全部自分でやらなきゃならない。小さいけど責任重大だよー…?」
右京「ええ。覚悟しています」
「じゃあ、僕向こうのブース行ってくるから、彼女達はよろしくね」
右京「ええ。僕でよろしければ」
「何かあったら係員に伝えておいてねー」
右京「ええ」
318: ◆GWARj2QOL2 2016/04/15(金) 20:45:23.65 ID:IONV755cO
>>70
地下の←×
無しでお願いします…
矛盾してますやんけこれすいません…
地下の←×
無しでお願いします…
矛盾してますやんけこれすいません…
71: ◆GWARj2QOL2 2016/03/15(火) 22:08:22.52 ID:syZ/1LToO
右京「…」
右京「…」
右京「…」
「…あのー…」
右京「はい?」
「あのー…ここに中学生くらいの、薄紫の髪の毛した子が来ませんでしたか?」
右京「はいぃ?」
「あれ?も、もしかして責任者の方では…?」
右京「いえ。関係者ではありますが、スタッフではありません」
「あ、そ、そうですか…えっと…」
右京「特徴を教えていただければ、伝えておきますよ」
「あ、はい…えっとですね…こう、横がハネてて…眼鏡をかけた大人しい感じの女の子です」
右京「薄紫で、横がハネていて眼鏡をかけた女の子ですね?」
「ええ。娘なんですけど…ちょっとはぐれちゃったみたいで…」
右京「了解しました。スタッフの方に伝えておきますので、ここを真っ直ぐ行ったブースでお待ちください」
「はい!ありがとうございます…」
右京「それでは」
「はい!」
右京「…」
右京「…」
右京「…はて、中学生、ですか…」
右京「…」
右京「…」
「…あのー…」
右京「はい?」
「あのー…ここに中学生くらいの、薄紫の髪の毛した子が来ませんでしたか?」
右京「はいぃ?」
「あれ?も、もしかして責任者の方では…?」
右京「いえ。関係者ではありますが、スタッフではありません」
「あ、そ、そうですか…えっと…」
右京「特徴を教えていただければ、伝えておきますよ」
「あ、はい…えっとですね…こう、横がハネてて…眼鏡をかけた大人しい感じの女の子です」
右京「薄紫で、横がハネていて眼鏡をかけた女の子ですね?」
「ええ。娘なんですけど…ちょっとはぐれちゃったみたいで…」
右京「了解しました。スタッフの方に伝えておきますので、ここを真っ直ぐ行ったブースでお待ちください」
「はい!ありがとうございます…」
右京「それでは」
「はい!」
右京「…」
右京「…」
右京「…はて、中学生、ですか…」
72: ◆GWARj2QOL2 2016/03/15(火) 22:13:35.29 ID:syZ/1LToO
友紀「え?薄紫の髪の毛の子?」
早苗「見てないわよ、そんな子」
右京「そうですか…」
友紀「普通に迷子アナウンスしてもらえばいいんじゃないの?」
早苗「まあ、そうよね」
友紀「スタッフに言ってないの?」
右京「ええ」
早苗「えっ!?何仕事放棄してんのよ!!」
友紀「今すぐ言わなきゃ!親御さん待ってるんでしょ!?」
右京「…まだ30分も経ってませんよ?」バッ
友紀「十分すぎるでしょ!!苦情来るよ!!」
右京「そうなんですがねぇ…僕にはどうも、迷子とは思えないんですよ…」
早苗「…迷子と思えないって…」
右京「ええ。中学生といえばもう一人で電車にも乗るような年齢です。親と一緒に来たとはいえ迷子になるとは考えにくい…」
早苗「考え過ぎよ。今の子なんてそんなもんでしょ」
右京「そうですかねぇ…だとしたら何故その子供の方はスタッフに声を掛けないのでしょう…」
友紀「スタッフが分からないとか?」
右京「それは考えにくいというものです。ええ、何故かと言いますとスタッフの方々は皆共通のベストを羽織っている。その上一つのブースに3人以上のスタッフが常駐している徹底ぶりです」
早苗「ただ単に恥ずかしいだけでしょ。中学生にもなって迷子って…あれ?」
右京「?」
友紀「?」
早苗「あれじゃない?」
友紀「んー…?」
「はいお待たせ!焼きそば一つ!」
「ありがとうございます!一度で良いからやってみたかったんです!こういうこと!」
「そうなの?じゃあ楽しんできなよ!ここら一帯色んなもん売ってるからさ!」
「はい!」
友紀「いやー…あれは…」
早苗「薄紫よ。でも」
友紀「だって全然おとなしくないじゃないですか。眼鏡もかけてないし」
早苗「…うーん…でもどう見ても特徴と合致するわよ…?」
右京「…妙ですねぇ」
早苗「…ん!まあでもほら、見つかったかも分かんないんだからさ!ほら親御さんのとこ行った行った!あの子はアタシが捕まえとくから!」
右京「そうですねぇ…」
早苗「アンタらの仕事は着ぐるみと迷子探し!探偵ごっこは家でやんなさい!」
友紀「は、はーい…」
早苗「見てないわよ、そんな子」
右京「そうですか…」
友紀「普通に迷子アナウンスしてもらえばいいんじゃないの?」
早苗「まあ、そうよね」
友紀「スタッフに言ってないの?」
右京「ええ」
早苗「えっ!?何仕事放棄してんのよ!!」
友紀「今すぐ言わなきゃ!親御さん待ってるんでしょ!?」
右京「…まだ30分も経ってませんよ?」バッ
友紀「十分すぎるでしょ!!苦情来るよ!!」
右京「そうなんですがねぇ…僕にはどうも、迷子とは思えないんですよ…」
早苗「…迷子と思えないって…」
右京「ええ。中学生といえばもう一人で電車にも乗るような年齢です。親と一緒に来たとはいえ迷子になるとは考えにくい…」
早苗「考え過ぎよ。今の子なんてそんなもんでしょ」
右京「そうですかねぇ…だとしたら何故その子供の方はスタッフに声を掛けないのでしょう…」
友紀「スタッフが分からないとか?」
右京「それは考えにくいというものです。ええ、何故かと言いますとスタッフの方々は皆共通のベストを羽織っている。その上一つのブースに3人以上のスタッフが常駐している徹底ぶりです」
早苗「ただ単に恥ずかしいだけでしょ。中学生にもなって迷子って…あれ?」
右京「?」
友紀「?」
早苗「あれじゃない?」
友紀「んー…?」
「はいお待たせ!焼きそば一つ!」
「ありがとうございます!一度で良いからやってみたかったんです!こういうこと!」
「そうなの?じゃあ楽しんできなよ!ここら一帯色んなもん売ってるからさ!」
「はい!」
友紀「いやー…あれは…」
早苗「薄紫よ。でも」
友紀「だって全然おとなしくないじゃないですか。眼鏡もかけてないし」
早苗「…うーん…でもどう見ても特徴と合致するわよ…?」
右京「…妙ですねぇ」
早苗「…ん!まあでもほら、見つかったかも分かんないんだからさ!ほら親御さんのとこ行った行った!あの子はアタシが捕まえとくから!」
右京「そうですねぇ…」
早苗「アンタらの仕事は着ぐるみと迷子探し!探偵ごっこは家でやんなさい!」
友紀「は、はーい…」
73: ◆GWARj2QOL2 2016/03/15(火) 22:14:24.56 ID:syZ/1LToO
「あ、そうでしたか…良かったあ……でもちょっと遅いんじゃないですか?」
右京「ええ。なにぶん迷子の方が多いようでして。手間取っていたようです」
友紀「…」
「でも見つかったみたいで良かったです。あの子は私が見てないと不安で不安で…」
右京「そうでしたか…それは申し訳ありませんでした」
「ええ、大丈夫です。…全く、旦那が見てくれないから、私が見ててあげないと…」
右京「…」
友紀「…」
「あの子、誰かにいじめられたりしてませんか?ちょっかいかけられたりしてませんか?」
右京「ええ。僕の見た限りではそんな事はありませんでしたよ?」
友紀「そうですねー…凄い笑顔dムグッ…」
右京「案内しますので、どうぞこちらへ…」
友紀「んぐぐ…んん?」
右京「ええ。なにぶん迷子の方が多いようでして。手間取っていたようです」
友紀「…」
「でも見つかったみたいで良かったです。あの子は私が見てないと不安で不安で…」
右京「そうでしたか…それは申し訳ありませんでした」
「ええ、大丈夫です。…全く、旦那が見てくれないから、私が見ててあげないと…」
右京「…」
友紀「…」
「あの子、誰かにいじめられたりしてませんか?ちょっかいかけられたりしてませんか?」
右京「ええ。僕の見た限りではそんな事はありませんでしたよ?」
友紀「そうですねー…凄い笑顔dムグッ…」
右京「案内しますので、どうぞこちらへ…」
友紀「んぐぐ…んん?」
74: ◆GWARj2QOL2 2016/03/15(火) 22:15:15.14 ID:syZ/1LToO
「…」
「本当に申し訳ありませんでした…この子がご迷惑をおかけしたようで…」
早苗「大丈夫ですよー」
「…」
「この子は私が見てないとダメなんですよ。とても一人にはしていられません」
「…」
友紀「…」
右京「…」
「ほら貴方も謝りなさい」
「…」
「…幸子?」
「!」
「幸子」
友紀「お、お母さん…そんなことしなくても大丈夫ですから…」
「いえ!この子には謝ってもらわないと!悪いことしたんですから!」
「…」
友紀「え、えっと…」
「…ごめんなさい…」
「ごめんなさいじゃないでしょ?幸子。言った通りにしなさい」
早苗「…」
「…ご迷惑をおかけして、大変申し訳ございませんでした…」
「そう!それでいいの。ちゃんとお行儀良く出来る子は将来も安泰なんだから…」
友紀「…」
右京「…」
「本当に申し訳ありませんでした…この子がご迷惑をおかけしたようで…」
早苗「大丈夫ですよー」
「…」
「この子は私が見てないとダメなんですよ。とても一人にはしていられません」
「…」
友紀「…」
右京「…」
「ほら貴方も謝りなさい」
「…」
「…幸子?」
「!」
「幸子」
友紀「お、お母さん…そんなことしなくても大丈夫ですから…」
「いえ!この子には謝ってもらわないと!悪いことしたんですから!」
「…」
友紀「え、えっと…」
「…ごめんなさい…」
「ごめんなさいじゃないでしょ?幸子。言った通りにしなさい」
早苗「…」
「…ご迷惑をおかけして、大変申し訳ございませんでした…」
「そう!それでいいの。ちゃんとお行儀良く出来る子は将来も安泰なんだから…」
友紀「…」
右京「…」
75: ◆GWARj2QOL2 2016/03/15(火) 22:16:20.37 ID:syZ/1LToO
「それではこれで。どうもありがとうございました…」
右京「ええ」
早苗「…」
「…あっ…」ポト
「あ、幸子!貴方また財布をお尻のポケットに入れたりして…」
「ご、ごめ…すいません…」
「こんな持ち方は不良になりますよ!…全く…」
「は、はい………あっ」
右京「…」ヒョイ
友紀「!」
早苗「!」
「…!」
右京「落としましたよ?」
「は、はい…あ、ありがとうございます…」
「まあ!ちゃんとお礼が言えたわね!」
「…」
右京「お礼はともかく、財布をお尻のポケットに入れていると体の重心が左右非対称になり、骨盤が歪んでしまう可能性があります」
早苗「それにスリにあうかもしれないわよ」
「…どうも、ありがとうございました…」ペコ
「本当にありがとうございました。さ、行くわよ幸子」
「…はい…」
友紀「…」
早苗「…」
右京「…」
右京「ええ」
早苗「…」
「…あっ…」ポト
「あ、幸子!貴方また財布をお尻のポケットに入れたりして…」
「ご、ごめ…すいません…」
「こんな持ち方は不良になりますよ!…全く…」
「は、はい………あっ」
右京「…」ヒョイ
友紀「!」
早苗「!」
「…!」
右京「落としましたよ?」
「は、はい…あ、ありがとうございます…」
「まあ!ちゃんとお礼が言えたわね!」
「…」
右京「お礼はともかく、財布をお尻のポケットに入れていると体の重心が左右非対称になり、骨盤が歪んでしまう可能性があります」
早苗「それにスリにあうかもしれないわよ」
「…どうも、ありがとうございました…」ペコ
「本当にありがとうございました。さ、行くわよ幸子」
「…はい…」
友紀「…」
早苗「…」
右京「…」
76: ◆GWARj2QOL2 2016/03/15(火) 22:18:53.72 ID:syZ/1LToO
早苗「ちょいちょい」
友紀「?」
早苗「これ、見て」スッ
友紀「え?…うわっ!血出てますよ!」
右京「…先程の彼女ですか?」
早苗「ん。そう」
友紀「そうって…何でそんなこと…」
早苗「声掛けたら逃げようとしたのよ。そんで捕まえたら暴れられてその時引っかかれちゃった」
右京「おやおや…」
友紀「その…何か…アレな感じとか?」
早苗「いや、別にどこかおかしいってわけじゃないのよ。あの子。むしろ頭はかなり良い方に見えるわ。…でしょ?」
右京「ええ。とても聡明な方だと思いますよ」
友紀「なら、そんな子がなんで…」
早苗「さあ…ねぇ?」
友紀「そもそもさっきだって右京さん、どうしてアタシが喋ってるの止めたの?」
右京「…考えられることは一つです」
友紀「?」
早苗「…あの子、親に飼われてるわね」
友紀「…あっ…」
右京「ですが、それならそれで疑問が浮かびます」
早苗「何?」
右京「飼う、という表現は少し気に入りませんが、まあ良しとしましょう」
早苗「…何よ。もったいぶってないで…」
右京「飼っているということは、大事にしているということです。しかしそれなら何故この人混みの中に、それも迷子になりそうな空間に彼女を連れてきたのでしょう?」
早苗「…そういえば、そうね…」
友紀「…でもほら、アタシ達じゃどうしようも…」
早苗「さあ?どうかしらね?」
友紀「え?」
早苗「杉下係長?アンタあの子の財布に名刺…入れたでしょ?」
友紀「えっ…」
右京「おやおや。見破られていましたか」
早苗「元警官舐めんじゃないわよ。何?まさか同情であの子をスカウトするつもり?」
右京「どうでしょうねぇ…」
友紀「…」
早苗「…相変わらず何考えてるか分かんないわねぇ」
友紀「…でも、考えれば考えるほど…あの親子…」
右京「…妙ですねぇ」
友紀「妙だねぇ…」
早苗「妙ねぇ…」
友紀「?」
早苗「これ、見て」スッ
友紀「え?…うわっ!血出てますよ!」
右京「…先程の彼女ですか?」
早苗「ん。そう」
友紀「そうって…何でそんなこと…」
早苗「声掛けたら逃げようとしたのよ。そんで捕まえたら暴れられてその時引っかかれちゃった」
右京「おやおや…」
友紀「その…何か…アレな感じとか?」
早苗「いや、別にどこかおかしいってわけじゃないのよ。あの子。むしろ頭はかなり良い方に見えるわ。…でしょ?」
右京「ええ。とても聡明な方だと思いますよ」
友紀「なら、そんな子がなんで…」
早苗「さあ…ねぇ?」
友紀「そもそもさっきだって右京さん、どうしてアタシが喋ってるの止めたの?」
右京「…考えられることは一つです」
友紀「?」
早苗「…あの子、親に飼われてるわね」
友紀「…あっ…」
右京「ですが、それならそれで疑問が浮かびます」
早苗「何?」
右京「飼う、という表現は少し気に入りませんが、まあ良しとしましょう」
早苗「…何よ。もったいぶってないで…」
右京「飼っているということは、大事にしているということです。しかしそれなら何故この人混みの中に、それも迷子になりそうな空間に彼女を連れてきたのでしょう?」
早苗「…そういえば、そうね…」
友紀「…でもほら、アタシ達じゃどうしようも…」
早苗「さあ?どうかしらね?」
友紀「え?」
早苗「杉下係長?アンタあの子の財布に名刺…入れたでしょ?」
友紀「えっ…」
右京「おやおや。見破られていましたか」
早苗「元警官舐めんじゃないわよ。何?まさか同情であの子をスカウトするつもり?」
右京「どうでしょうねぇ…」
友紀「…」
早苗「…相変わらず何考えてるか分かんないわねぇ」
友紀「…でも、考えれば考えるほど…あの親子…」
右京「…妙ですねぇ」
友紀「妙だねぇ…」
早苗「妙ねぇ…」
77: ◆GWARj2QOL2 2016/03/15(火) 22:20:01.17 ID:syZ/1LToO
右京「…ああ!それと」パン
友紀「?」
右京「君、来週に行なわれるイベントで司会をやらせてもらえるそうですよ」
友紀「えっ!?」
早苗「あら、良かったじゃない」
右京「片桐さんの手助けのおかげですねぇ」
友紀「!…あ、ありがとうございます!」
早苗「あーいいのいいの。こういうのって持ちつ持たれつだから」
右京「勿論簡単なお仕事ではありませんよ」
友紀「う、うん!頑張る!」
早苗「…でもアンタ、どうすんのよ。あの子は」
右京「それはまた別の話です」
早苗「…まあ、名刺渡したところで来るかどうかも分かんないからね…」
右京「そうですねぇ…」
早苗「…何よその顔。まるでもう来るみたいな…」
右京「…ンフフ」
早苗「…やっぱアンタ苦手だわ、アタシ」
右京「そう思われているようですねぇ」
友紀「さ、早苗さん!」
早苗「あーはいはい。もう言わないから」
右京「…」
早苗「良い相棒が出来たみたいじゃない。今度は大事にしなさいよ」
右京「…ええ」
友紀「…?」
友紀「?」
右京「君、来週に行なわれるイベントで司会をやらせてもらえるそうですよ」
友紀「えっ!?」
早苗「あら、良かったじゃない」
右京「片桐さんの手助けのおかげですねぇ」
友紀「!…あ、ありがとうございます!」
早苗「あーいいのいいの。こういうのって持ちつ持たれつだから」
右京「勿論簡単なお仕事ではありませんよ」
友紀「う、うん!頑張る!」
早苗「…でもアンタ、どうすんのよ。あの子は」
右京「それはまた別の話です」
早苗「…まあ、名刺渡したところで来るかどうかも分かんないからね…」
右京「そうですねぇ…」
早苗「…何よその顔。まるでもう来るみたいな…」
右京「…ンフフ」
早苗「…やっぱアンタ苦手だわ、アタシ」
右京「そう思われているようですねぇ」
友紀「さ、早苗さん!」
早苗「あーはいはい。もう言わないから」
右京「…」
早苗「良い相棒が出来たみたいじゃない。今度は大事にしなさいよ」
右京「…ええ」
友紀「…?」
78: ◆GWARj2QOL2 2016/03/15(火) 22:21:13.84 ID:syZ/1LToO
「それじゃ!お疲れ様ー!」
「「お疲れ様でしたー!」」
「お、お疲れ様でしたー!」
早苗さんの掛け声に始まり、会場の一室でアルコールの無い小さい打ち上げが始まった。
アタシみたいな小さな役柄の人間にもその場を与えてくれて、少しでも盛り上がりを分かち合えるよう尽力してくれたんだろうなぁ。
…。
それでも…。
「…」
右京さんは出された物は口にせず、ただ笑顔でみんなと談笑していた。
…まあ、確かにあの人が変わった人だっていうことはなんとなく理解出来る。
けれど、別にそんな事で煙たがれる人には見えない。
…それでも、やっぱり気になる。
さっき、早苗さんが言った言葉。
「今度は」大事にしろ。
「…」
…あれって、どういうことなんだろう。
…右京さんは、アイドルを大事にしない人?
…いや、それは考えにくい。
アタシの為にどれほどプライドを削っていると思ってるの?
…本当は、知ってる。
さっきの仕事の件だって、責任者の人が頼み込まれたって言ってたから。
「…」
なら、一体何がどうなって、右京さんは今みたいな地位になったんだろう。
…。
……。
そして、そのアタシの疑問は。
…意外な形で解消されることになったんだ。
…ただ、アタシはこの時その疑問を遥かに上回る事を思い出したんだ。
そう。
「…………え?イベント…来週?」
第二話 終
「「お疲れ様でしたー!」」
「お、お疲れ様でしたー!」
早苗さんの掛け声に始まり、会場の一室でアルコールの無い小さい打ち上げが始まった。
アタシみたいな小さな役柄の人間にもその場を与えてくれて、少しでも盛り上がりを分かち合えるよう尽力してくれたんだろうなぁ。
…。
それでも…。
「…」
右京さんは出された物は口にせず、ただ笑顔でみんなと談笑していた。
…まあ、確かにあの人が変わった人だっていうことはなんとなく理解出来る。
けれど、別にそんな事で煙たがれる人には見えない。
…それでも、やっぱり気になる。
さっき、早苗さんが言った言葉。
「今度は」大事にしろ。
「…」
…あれって、どういうことなんだろう。
…右京さんは、アイドルを大事にしない人?
…いや、それは考えにくい。
アタシの為にどれほどプライドを削っていると思ってるの?
…本当は、知ってる。
さっきの仕事の件だって、責任者の人が頼み込まれたって言ってたから。
「…」
なら、一体何がどうなって、右京さんは今みたいな地位になったんだろう。
…。
……。
そして、そのアタシの疑問は。
…意外な形で解消されることになったんだ。
…ただ、アタシはこの時その疑問を遥かに上回る事を思い出したんだ。
そう。
「…………え?イベント…来週?」
第二話 終
79: ◆GWARj2QOL2 2016/03/15(火) 22:25:57.68 ID:syZ/1LToO
また書けたら続き投下します
80: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/15(火) 22:32:39.21 ID:ZW9PwNECO
乙
右京さんとしゃべってたスタッフさんが官房長で脳内再生された
右京さんとしゃべってたスタッフさんが官房長で脳内再生された
81: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/15(火) 22:54:28.86 ID:fbdY6NssO
乙
85: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/16(水) 12:26:46.03 ID:hpWPc9sYO
乙
右京節最初から炸裂しまくってんな
個人的に亀山君時代が一番好き
次点で陣川君
右京節最初から炸裂しまくってんな
個人的に亀山君時代が一番好き
次点で陣川君
86: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/16(水) 21:15:49.88 ID:OHtNNQNDO
続ききてたのか、乙
>>69
造語どころか、一所懸命から派生して一生懸命が生まれたのに…
早苗さんェ…
>>69
造語どころか、一所懸命から派生して一生懸命が生まれたのに…
早苗さんェ…
88: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/17(木) 23:55:33.90 ID:R3SWCEKDO
面白いです、乙乙
相棒はまともに1話視聴したことすらないが、右京の声、話し方が脳内再生されるなぁ
相棒はまともに1話視聴したことすらないが、右京の声、話し方が脳内再生されるなぁ
89: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/18(金) 11:33:35.70 ID:FpDgpXhMO
ぷるぷるするのが見れそう